同じループを8小節も聴いていると飽きてくる……。そんなときに頼れるのが、グリッチ・リズム系エフェクトです。
音数を増やさずに展開を作りたいのに、リバーブやディレイをかけるだけでは物足りない。かといって、オーディオを手で切り刻んで並べ直す作業は、時間がかかりすぎて曲作りの勢いまで削られます。
操作方式は大きく「描く」「ステップ」「自動・演奏」の3つ。ここさえ押さえれば、いま買える代表的な10本の個性が一気に見えてきます。
目次
グリッチ・リズム系エフェクトについて
グリッチ・リズム系エフェクトは、僕が分かりやすさのために使っている呼び方です。すでに鳴っている音に挿して、拍に合わせて音を「飛ばす・繰り返す・変化させる」エフェクトの総称。グリッチ系のエフェクトプラグインを探すと、このタイプがまとめて出てきます。
- グリッチ:音が飛ぶ、途切れる、逆再生になる、といった「わざと壊した」質感。デジタルエラーのような音を演出として使う手法
- スタッター:音の一部を細かく連打して、つっかえるように聴かせる効果
- ビートリピート:鳴っている音の一瞬を録って、拍に合わせて繰り返す効果
- LFO:一定の周期でつまみの値を上下させる仕組み。音量やフィルターが自動で揺れる
- ステップ:1小節を16や32に区切った「マス目」。マスごとにエフェクトのオン・オフや種類を変えられる
- ゲート:音を通したり止めたりするスイッチ。細かく開閉するとリズミカルに刻まれる
混ざりやすいのが「ステップシーケンサー」です。ドラムやシンセの打ち込みで使うものは、音を鳴らす側の道具。今回のエフェクトは、できあがったループやフレーズに後から掛けて、変化を足す側にあたります。
3つの方式は、仕組みの違いで分かれます。LFOやグラフを手描きして「エフェクトの効き方を時間で動かす」のが描く型。マス目にエフェクトを置いて「ステップで切り替える」のがステップ型。そして、ループを自動で崩したり、鍵盤やつまみで発動させたりするのが自動・演奏型です。
粒状に分解して再構築するグラニュラー系は、おすすめグラニュラーシンセ・エフェクトプラグイン徹底比較にまとめています。グラニュラーが質感を作り替える方向なら、こちらはリズムの動きを作る方向です。
グリッチ・リズム系エフェクトの可能性について
「ライブやEDMの派手な演出用」と思われがちですが、普段の打ち込みにもかなり効く道具です。
静的なループに動きを与える。
サンプルのドラムループやコードのバッキングは、音そのものが一定なので、聴き続けると飽きがきます。そこへ拍に合わせてフィルターを開閉したり、音量を細かく刻んだりすると、同じ素材なのに「呼吸している」ように聴こえてきます。
トラックを増やさずに展開を作る。
Aメロは控えめ、サビ前だけスタッターを入れてテープストップで落とす。エフェクトの強さを展開に合わせて変えるだけで「何かが起きている感」が出ます。新しい楽器を足さないので、ミックスが混み合わないのも地味に助かるポイントです。
ビートそのものを作り変える。
ドラムループを切り刻んで、リバースやスタッターで並べ替えれば、元とは別物のブレイクビーツに。手作業なら数十分かかる作業が、プリセットの切り替えで済むこともあります。「このループ普通すぎるな」と思ったときの突破口になりますよ!
ジャンルはEDM、ヒップホップ、ローファイ、IDMが分かりやすいところ。ポップスのサビ前やボーカルのアクセント、ギターのアルペジオに足す使い方もありです。ギタリスト目線だと、録音した演奏はどうしても一定になりがちなので、エフェクト側で動きを足せるのはありがたい。打ち込み専門の人だけの道具ではありません。
おすすめのグリッチ・リズム系エフェクトプラグイン
定番の5本に、リズム面で外せない5本を加えた計10本です。各製品の冒頭に、3タイプのどれに当たるかを添えました。
Baby Audio HyperWarp
Baby Audio HyperWarp
描く型。Baby Audio HyperWarpは、グラフに線を描くだけで、スタッター、逆再生、テープストップが作れるエフェクトです。X軸が処理する時間の長さ(拍数)、Y軸が「どれだけ過去に巻き戻して再生するか」。曲線ならテープストップ、階段状ならカクカクしたスタッター、傾きが一定を超えれば逆再生になります。「線の形=音の動き」が見ただけで分かるのが、最大の強みです!
内部では音を細かい粒に分けて並べ直すグラニュラーエンジンが動き、7種類のプロファイルで質感を変えられます。ロック付きのランダマイズがあり、プリセットは約190。操作が1画面で完結するので、描く型の入口にちょうどいい一本です。ただしグラフの考え方に慣れるまでは、狙った動きが出せず少し戸惑うかもしれません。
あわせて読みたい:Baby Audio HyperWarpはこう使え!ループの単調さを解消!描くだけでグリッチとテープストップが作れるグラニュラーFX
Arturia Efx MOTIONS
Arturia Efx MOTIONS
ステップ型(Beat Repeater・ユークリッド)と描く型(変調)の両対応。Arturia Efx MOTIONSは、「動き」に振り切ったエフェクトです。Filter、Noise、Drive、Volume、Panの5モジュールを、描いたエンベロープ(音の変化の形)やステップシーケンサー、ユークリッドリズム(少ない打点を均等に散らして独特のノリを作る方式)で動かします。16ステップのBeat Repeaterも内蔵していて、ロールやリバース、テープストップなどをステップごとに仕込めるのが目玉です。
Volumeに細かいパターンを描けば刻まれたゲートになり、Filterに16ステップを当てればステップごとに違うスイープが走ります。Crossoverで効かせる帯域を絞れるのも便利。収録プリセットは300を超えます。グリッチ専用機というより「動きの総合工具」で、スタッターを一発決めたいだけなら機能が余るでしょう。
あわせて読みたい:【DTM必携エフェクト】Arturia Efx MOTIONS完全攻略 Beat Repeaterから変調まで
Cableguys ShaperBox 3 Bundle
「ShaperBox3」になりブラウザが進化。プリセットのエフェクトカテゴライズがよりわかりやすく探しやすくなりました。
描く型。Cableguys ShaperBox 3 Bundleは、LFOを手描きして音を動かす「Shaper」シリーズ11種(Volume、Time、Drive、Filter、Crush、Noise、Pan、Width、Liquid、Reverb、Pitch)のバンドルです。ペンツールで点を置いて引っ張るだけで波形が描け、各エフェクトを3バンドに分けて動かせます。
主役はTimeShaper。スタッター、スクラッチ、ハーフタイム(半分の速さに落ちる演出)、リバースを、波形を描くだけで作れます。VolumeShaperならサイドチェイン風のダッキングにも使えて、複数のShaperを重ねればビルドアップも思いのまま。入力音のアタックでLFOを頭出しするAudio Triggeringも魅力です。ただし11種を使い分けるぶん画面の情報量は多く、HyperWarpより覚えることは増えます。600以上のプリセット付き。
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Sugar Bytes Effectrix 2
ステップ型。Sugar Bytes Effectrix 2は、この型の代表格です。32ステップのマス目に、エフェクトを絵を描くように置いていきます。14種類のエフェクトにはLooper、Grain、Vinyl、Crush、Filter、Delay、Reverb、Levelなどが並び、Vinylでテープスタート・ストップやスクラッチ、Looperで高速ループ、Levelでトランスゲート……と、グリッチの定番が1本に揃います。
ステップごとにパラメーターを動かすモジュレーションも豊富です。値が移り変わるFrom-To、入力音に反応するエンベロープフォロワー、LFO、ボリュームにつなぐとスタッターが作れるSteptrainなどを使えます。最大12パターンを保存できます。細かいリズムを自分で組む手間を楽しめる人に向いた設計で、受け身で「おまかせ」したい人には少し重いかもしれません。
BEATSURFING CHEat Code
CHEat Code
自動・演奏型。BEATSURFING CHEat Codeは、ヒップホッププロデューサーChe Popeとの共同開発による、16モジュールのマルチエフェクトです。
リズム面で出番が多いのは、逆再生やハーフタイムのReverser、マルチバンドで刻むSlicer、ビートをその場で切り貼りするShuffler、ステップでディレイを動かすSequence Delayあたり。
一瞬だけエフェクトを投げ込むパフォーマンス機能もあり、手で演奏する感覚で使えます。
直列と並列を連続的にブレンドできるルーティングが面白く、つまみを中央にすれば半々です。全モジュールのつまみが同じ画面に並ぶので、タブ切り替えのストレスもありません。気をつけたいのは、16モジュールのうち同時に使えるのは4つまでという点。レビュー時のVer.1.1.1ではMIDI Learnも未搭載で、ノブが小さく画面の拡大が前提になるなど、惜しい部分もあります。
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United Plugins Relooper
自動・演奏型。United Plugins Relooperは、鳴っているループを自動で切り刻んで並べ替える、少し毛色の違うタイプです。入力音を常にバッファ(一時的な記憶領域)に溜め、再生スピード、向き、位置、長さを変えながら再配置する「Groove」エンジンが心臓部。スライス作業は不要で、挿してパターンを選ぶだけで、スタッターやリバース、シンコペーション(拍をずらして生むノリ)が出てきます。
グルーヴを2層まで作って原音とブレンドでき、64種類のProfileとエフェクトで質感も変えられます。Motionを使えば、小節の最後だけグルーヴを鳴らす自動フィルインも可能。ステップを組むのではなく、出音を聴いて気持ち良いものを選ぶ、DJ機器に近い感覚です。「3拍目の裏だけ変えたい」といった外科手術的な編集は、ここでは得意分野ではありません。
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Devious Machines Infiltrator 2
Devious Machines Infiltrator 2
ステップ型。Devious Machines Infiltrator 2は、54種類のエフェクトから最大10個を積み重ねて動かす汎用マルチエフェクトです。ここにリズム面で入れる理由があって、その10個を32ステップのシーケンサーでオン・オフできます。「ここはディレイ、ここはピッチシフト、ここはリバース」と切り替わるので、1本でステップ型の動きが作れるわけです。
各エフェクトにテンポ同期のエンベロープが2つ付き、ランダムパターンやユークリッドリズム、スウィングも扱えます。収録プリセットは1500を超える大所帯です。ループ操作に寄ったEffectrix 2に対して、こちらはフィルターやスペクトラル系まで幅広くステップに載せられそうです。エフェクトの知識があるほど自在に動かせるので、使いこなしには経験がものを言います。
あわせて読みたい:「Infiltrator2」セール&レビュー!最大10個同時使用!54エフェクトてんこ盛りマルチエフェクト
Excite Audio Motion: Fractal
ステップ型。Excite Audio Motion: Fractalは、グラニュラーの比較記事でも取り上げた製品ですが、32ステップのトランスゲートとBeat Repeat(スタッター)を持つので、リズム面でも入れる理由があります。ゲートはステップごとに開き方のカーブまで決められ、「ゆっくり開いてパッと閉じる」といった呼吸の形まで作れるのが面白いところ。
Beat Repeatは繰り返す回数やタイミング、テンポ同期かフリーかを選べます。モジュールの順番も入れ替え可能で、ゲートを先に置くか、2基のグラニュラーを先に置くかで質感が変わります。六角形のコントローラーで複数のパラメーターを一度に動かし、その動きを録音もできる攻めた設計。エレクトロニカやベースミュージック系の展開と相性が良さそうです。
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その他に注目したいグリッチ・リズム系エフェクト
上記以外にも、名前が挙がることの多い定番が2本あります。どちらも自動・演奏型です。
Sugar Bytes Turnadoは、8つのつまみそれぞれにエフェクトが割り当てられた「演奏するエフェクト」です。エキスパートモードでは24種類のエフェクトから選べ、各スロットにLFOやステップシーケンサーも付きます。複数のつまみを1本のフェーダーで動かすDictator機能もあり、マス目を組むEffectrixに対して、手でつまみを触ってライブ的にいじるのが得意なタイプと思われます。Turnadoの購入はこちら
iZotope Stutter Edit 2は、スタッターの生みの親BTが手がけた元祖的な存在です。
スタッターやフィルターの動きがセットになった「Gesture」を、MIDI鍵盤で発動して使うのが基本で、Autoモードならボタン1つで試せます。価格は今回の10本で最も高く、対応OSはmacOS Sonoma以降とWindows 10・11。古いMacは対象外になるので、購入前に環境を見ておきたいところです。Stutter Edit 2の購入はこちら
選び方のポイント
迷ったときの軸は3つです。
操作方式の違いで選ぶ。
- 描く型(HyperWarp、ShaperBox 3、Efx MOTIONSの描画エンベロープ):カーブやグラフを描いて、速度や音量の変化を決めます。ビルドアップ前の「この落ち方」を狙った形にしたい人向き
- ステップ型(Effectrix 2、Infiltrator 2、Motion: Fractal、Efx MOTIONSのBeat Repeater):マス目にエフェクトを置いてリズムを組みます。打ち込みに近い感覚で、パターンを作る過程を楽しめる人向き
- 自動・演奏型(Relooper、CHEat Code、Turnado、Stutter Edit 2):ループを自動で崩したり、鍵盤やつまみで発動させたりします。設計より直感で動かしたい人向き
曲全体にかけっぱなしにするか、フィルイン用か。
ループにかけっぱなしでじわじわ動かすなら、パターンを固定できる描く型やステップ型が合います。ただ、耳が慣れて効果が薄れるので、使いどころは絞ったほうが効きます。サビ前の1小節だけ、といったフィルイン用なら、MIXノブのオートメーションで十分です。Relooperの自動フィルインや、鍵盤で発動するStutter Edit 2は、この用途にぴったり。
初心者はプリセットから。
どれもパラメーターは多めです。最初はプリセットを切り替えて「いい動き」を拾い、気に入ったものを少しずつ触る流れが挫折しにくい。個人的には、描く型ならHyperWarp、自動・演奏型ならRelooperが入りやすいと思います。ただし、どれもミックスの基本処理には使えないので、EQやコンプで土台を固めてから、アクセントとして足す順番が合っています。
どんな人におすすめ?
- 同じループの繰り返しに飽きて、トラックを増やさずに展開を作りたい人
- サビ前やブレイクで、スタッターやテープストップ、リバースをサッと入れたい人
- 手作業のオーディオ切り貼りに疲れて、描画やステップ入力で時短したい人
- ボーカルチョップやギターのアルペジオに、リズミカルな動きを足したい人
- リバーブやディレイだけでは物足りなくなり、サウンドデザイン寄りのエフェクトを探している人
最新のセール状況はDTMプラグインセールのおすすめまとめでも更新しています。
FAQ
- Q. DAW標準のビートリピートがあれば、専用プラグインは要りませんか?
-
Ableton Liveの同名デバイスのような標準機能でも、一定の繰り返しは作れます。専用プラグインの差が出るのは、「線を描いて速度を変える」「ステップごとに別のエフェクトを当てる」「複数のエフェクトを同時に動かす」といった自由度。まず標準機能で試して、物足りなくなってから選んでも遅くありません。
- Q. ギターやボーカルなど、生音にも使えますか?
-
使えます。ボーカルを切り刻んでチョップにしたり、ギターのアルペジオにスタッターを足したりする使い方が定番です。ある程度の音数やリズムのあるフレーズのほうが変化が分かりやすく、単音のロングトーンは効果が薄く感じることもあります。
- Q. 体験版はありますか?
-
Efx MOTIONS、Effectrix 2、Infiltrator 2、Motion: Fractal、Turnado、Stutter Edit 2、ShaperBox 3は、無料トライアルで試せます。HyperWarpもBaby Audioのトライアル版で試せます(60秒ごとに5秒の無音が入る仕様)。Relooperは15日間の体験版があります。CHEat Codeは体験版がありませんが、購入後14日以内なら返金を受け付けています。
- Q. 対応DAWやOSは?
-
Windowsは10以降なら、紹介した10本すべてで問題ありません。ただしEfx MOTIONSはWindowsのARMプロセッサ非対応です。macOSは製品ごとに下限が異なり、Relooperは10.14、Motion: Fractalは10.15、Stutter Edit 2はSonoma以降が必要です。古いMacを使っている人は購入前に確認してください。フォーマットは、Mac版が10本ともAUに対応しているので、Logic Proでも使えます。
- Q. ライブやリアルタイムの操作に向く製品はどれですか?
-
自動・演奏型が向いています。Turnadoはライブでの使用を想定していて、MIDIでのリモート操作にも対応。Stutter Edit 2はMIDI鍵盤でGestureを発動でき、CHEat Codeは一瞬だけエフェクトを投げ込むパフォーマンス機能を備えます。Efx MOTIONSもMIDIをトリガーにできます。
まとめ
グリッチ・リズム系エフェクトは、操作方式で選べば迷いません。ループの単調さは、音数を増やさなくても抜け出せます。10本を3タイプで振り返ると、こうなります。
- HyperWarp:グラフに線を描いて、スタッターやテープストップを作る描く型
- ShaperBox 3 Bundle:LFOを描いて、11種のShaperで動きを重ねる描く型
- Efx MOTIONS:描いた変調と16ステップのBeat Repeaterを併用できる両対応型
- Effectrix 2:32ステップのマス目にエフェクトを置いていくステップ型の代表格
- Infiltrator 2:10個のエフェクトを32ステップで切り替える、汎用寄りのステップ型
- Motion: Fractal:32ステップのゲートとスタッターを持つ、攻めた設計のステップ型
- Relooper:鳴っているループを自動で崩す自動型
- CHEat Code:16モジュールを手で重ねて投げ込む演奏型
- Turnado:8つのつまみで遊ぶ演奏型
- Stutter Edit 2:鍵盤でGestureを発動させる演奏型
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