「ただ音を劣化させるだけのビットクラッシャーにはもう飽きた…」
「低音の迫力をしっかり残したまま、高音だけにザラッとした質感を加えたい」
そんな、サウンドデザインにおけるワンランク上の悩みを一発で解決してくれるのが、MeldaProductionの「MBitFunMB」です。
MeldaProductionの「MBitFunMB」使ってみた
通常のビットクラッシャーと言えば、トラック全体のオーディオ解像度を下げて「バリバリ」「ジリジリ」といった Lo-Fi なノイズを足すエフェクトです。しかし、やりすぎると楽曲全体が安っぽく聞こえてしまったり、せっかくのキックやベースの重低音がスカスカになってしまうという致命的な弱点がありました。
MBitFunMBは、その名の通り「マルチバンド(帯域分割)」に対応したビットクラッシャーです。最大6つの帯域に分けて個別にビットレートを操作できるこの革新的なプラグインは、強烈な破壊的サウンドから、Lo-Fiヒップホップに欠かせない繊細なビンテージ感まで自由自在にデザイン可能。「狙った帯域だけを壊す」という、プロのエンジニアが密かに行っているミックステクニックを手に入れたいDTMer必見のレビューと使い方をお届けします!
MBitFunMBの主な機能は「最大6つの独立した周波数帯域、4つのモジュレーター」
入力されたオーディオを、
サンプルあたり1~16ビットの限定された固定小数点精度データに変換し、
複数のビット操作で各ビットにアクセスできるようにし、最後にローパスフィルターで処理を完了します。
目次
1. はじめに:ただの「音割れ」で終わらせない、新次元のビットクラッシャー
DTMをしていると、必ず一度は「ビットクラッシャー(Bitcrusher)」というエフェクトに出会うはずです。これは、CD音質である16ビットや24ビットのオーディオデータを、意図的に8ビットやそれ以下に下げる(劣化させる)ことで、古いサンプラーやテレビゲームのような粗い質感を作り出すツールです。
単純なビットクラッシャーの弱点とは?
もちろん、DAWに標準搭載されているシンプルなビットクラッシャーでも、それなりの効果は得られます。しかし、実践的なミックスにおいて、以下のような壁にぶつかったことはありませんか?
- ドラムループ全体にかけたら、ハイハットはカッコよくなったが、キックの低音が歪みすぎて使い物にならなくなった。
- ボーカルにかけたら、ザラッとした質感は出たが、言葉の輪郭がボヤけて何を歌っているのかわからなくなった。
- シンセサイザーの「ジリッ」という質感がずっと同じ鳴り方をしていて、時間とともに耳障りに感じてしまう。
これらはすべて、
エフェクトが「トラックの全帯域に対して均一にかかってしまう」ことが原因です。
プロが愛用する「狙った帯域だけを壊す」という発想
そこで第一線で活躍するサウンドクリエイターたちが多用するのが、「低域・中域・高域でエフェクトのかけ方を変える」というマルチバンド処理の手法です。
例えば、「100Hz以下の重低音はまったく歪ませずにクリーンなまま保ち、2kHz以上の中高音域だけを激しく8ビットに落としてノイズを足す」といった処理です。
これまでは、EQで帯域を分けて別々のトラックに送り、そこに個別にビットクラッシャーを挿すという非常に面倒なルーティングが必要でしたが、MBitFunMBを挿せば、たった一つの画面でこの複雑な処理を一瞬で完結させることができるのです。
2. MBitFunMBの最大の特徴「マルチバンド処理」の圧倒的メリット
MBitFunMBが他の競合プラグインと明確に一線を画しているのが、MeldaProductionお得意の、極めて柔軟で高度なマルチバンド・エンジンです。
最大6バンド!低域はキープして高域だけを破壊
最大6バンド
MBitFunMBは、周波数帯域を最大6つに分割することができます。分割するポイント(クロスオーバー周波数)もグラフィカルなインターフェースでドラッグするだけで直感的に調整可能です。
- Band 1 (低域): ビットレートを「16ビット(劣化なし)」のままスルーさせる。これにより、キックドラムの「ドンッ」という芯のあるパンチ力や、サブベースの豊かさを一切損なうことがありません。
- Band 2 (中域): ボーカルやスネアの大切な帯域。ここでは「12ビット」程度に軽く落とし、少しだけアナログライクな温かみや太さを付加します。
- Band 3 (高域): ハイハットやシンセの倍音が含まれる帯域。思い切って「4ビット」や「2ビット」まで下げ、激しいジリジリ感やグリッチノイズを発生させます。
このように、帯域ごとにビットクラッシュの度合い(1サンプルあたり1〜16ビットの固定小数点精度)を個別に設定できるため、「パワフルでありながら、エッジの効いた粗さを持つ」という、相反する要素が同居した魔法のようなサウンドを簡単に作ることができます。
クロスオーバーの種類の多さ
アナライザー上を右クリックメニューで表示させるとCROSSOVERメニューが出てきます
単に帯域を分けるだけでなく、その分け方(クロスオーバーフィルターの種類)も驚くほど豊富です。アナログ、リニアフェイズ(位相ずれを起こさない)、ハイブリッドなどから選べるため、分割することによる音質劣化を最小限に防ぐことができます。これはマスタリンググレードの処理に対応できることを意味します。
3. 4つのモジュレーターが叶える「動く」サウンドデザイン
MBitFunMBが「設計型ビットクラッシャー」と呼ばれる理由は、単なる帯域分割にとどまりません。MeldaProductionのフラッグシップ機能である「モジュレーション・システム」がそのまま搭載されています。
LFOやエンベロープで「時間変化」を生み出す
MBitFunMBには、4つの完全に独立したモジュレーターが内蔵されています。これらのモジュレーターは、LFO(低周波オシレーター)、レベルフォロワー、エンベロープジェネレーター、ランダマイザー、さらにはピッチディテクターとしての機能を持ち、プラグイン内のあらゆるパラメーターを自動的に「動かす」ことができます。
例えば、
- LFOでうねりを作る: 高域のビットレートを、曲のテンポに合わせて「8ビット〜4ビット〜8ビット…」と滑らかに往復させるLFOを設定します。すると、ハイハットのノイズ感が波のようにうねり、楽曲に強烈なグルーヴ感が生まれます。
- エンベロープでアタックだけを歪ませる: スネアドラムが鳴った瞬間の「アタック部分(最初の数ミリ秒)」だけ激しくビットクラッシュし、余韻はクリーンな音に戻る、といったダイナミックな処理が可能です。これにより、トランジェント(音の立ち上がり)だけを強調した鋭いスネアが作れます。
リズムに連動したグリッチサウンドの作り方
ランダマイザー機能やステップシーケンサーを使えば、ビートに合わせてランダムに特定の帯域が激しく破壊されるような、IDM(インテリジェント・ダンス・ミュージック)やグリッチ系のエレクトロニカに欠かせない、予測不能でリズミカルなノイズサウンドを自動生成することも可能です。これは手書きのオートメーションでは到底再現できない、プラグインならではの強みです。
4つのモジュレーター
XOR,REPLACE,AND,ORはモジュレーターをかけるときの条件を示しています。
XORパネルはXOR演算を制御します。
XOR演算では、両方の入力が異なる場合に1が出力されます。制御信号が存在する場合、プロセッサの動作は異なります。制御信号とは入力とは異なる信号であり、遅延が使用されている場合、サイドチェーンがアクティブになっている場合、またはシフトがゼロ以外の場合に使用されます。
ANDパネルはAND演算を制御します。
AND演算は、両方の入力が1の場合に1を出力します。制御信号がある場合、プロセッサの動作は異なります。制御信号とは入力とは異なる信号で、遅延が使用されている場合、サイドチェーンがアクティブになっている場合、またはシフトがゼロ以外の場合に使用されます。
REPLACEパネルはREPLACE(置換操作を制御します。
置換操作では、選択したビットを制御信号のビットで置き換えます。制御信号とは入力とは異なる信号で、ディレイが使用されている場合、サイドチェーンがアクティブになっている場合、またはシフトがゼロ以外の場合に使用されます。
ORパネルはOR演算を制御します。
OR演算は、入力のうち少なくとも1つが1の場合に1を出力します。制御信号がある場合、プロセッサの動作は異なります。制御信号とは入力とは異なる信号で、ディレイが使用されている場合、サイドチェーンがアクティブになっている場合、またはシフトがゼロ以外の場合に使用されます。
4. 【実践編】MBitFunMBのおすすめの使い方・音作り
機能が豊富すぎるため、最初はどこから触っていいか迷うかもしれません。ここでは、実際の楽曲制作ですぐに使える具体的な活用テクニックを3つ紹介します。
1. Lo-Fiヒップホップ向け:ドラムバスにビンテージ感を足す
Lo-Fiヒップホップでは、ドラムに「古いサンプラー(SP-404やMPC)を通したような質感」が求められます。
- 設定方法: MBitFunMBをドラムバス(ドラムをまとめたトラック)に挿します。帯域を3つに分けます。低域(〜150Hz)は何もしません。中域(150Hz〜3kHz)はビットレートを10ビット程度に下げて少しモサッとした太さを出します。高域(3kHz〜)は6ビット程度まで下げ、さらに高域のボリューム自体を少し下げます。
- 効果: これにより、キックの太さはそのままに、スネアやハイハットが「ザラッ」としたビンテージ感あふれるサウンドに生まれ変わります。
2. ボーカル処理:ミックスに埋もれない「ザラつき」のレイヤー
エレクトロポップやロックにおいて、ボーカルがオケに埋もれてしまう時、単にボリュームやEQを上げるのではなく「倍音(歪み)」を足すのが効果的です。
- 設定方法: ボーカルトラックを複製(あるいはセンドで送る)し、MBitFunMBを挿します。帯域を2k〜5kHz付近の「声の芯」となる部分だけ残し、他の帯域はカットします。残した中高域を激しくビットクラッシュ(2〜4ビット)させます。
- 効果: この「激しく壊れたボーカル」を、元のクリーンなボーカルトラックの後ろでうっすら(ボリュームをかなり下げて)鳴らします。すると、ボーカルの輪郭に「ジリッ」としたエッジが付き、オケの中で圧倒的な存在感を放つようになります(パラレル・プロセッシングと呼ばれる手法です)。
3. EDM・ベースミュージック:凶悪なベースサウンドの錬成
DubstepやNeurofunkなどのジャンルでは、とにかくベースサウンドの「凶悪さ」が命です。
- 設定方法: シンプルなサイン波のサブベースにMBitFunMBを適用します。帯域を3つに分け、極低域はクリーンに保ちます。中域から高域にかけて、極端なビットクラッシュ(1ビットや2ビット)を設定し、さらにモジュレーター(LFO)を使ってビットレートの値を高速で揺らします。
- 効果: 腹の底に響く重低音の上に、金属をグラインダーで削っているような、耳をつんざく凶悪な倍音がリズミカルに唸る、ダブステップ特有の「グロウルベース(Growl Bass)」に近いサウンドを一瞬で作り出せます。
5. 豊富なプリセットとMelda共通の便利機能
MBitFunMBはパラメーターが多くて難しいと感じる方でも安心してください。
まずは58種類のプリセットから始めよう
MBitFunMBファクトリープリセット
最初から緻密に設定された58種類のファクトリープリセットが収録されています。使い方は簡単で、ボーカル、ドラム、シンセなど、適用したいトラックの性質に合ったプリセットを選び、そこから分割するポイントや歪みの強さを微調整していくのが最もスムーズな使い方です。
M/S処理やアップサンプリング対応の恩恵
さらに、MeldaProduction製品に共通する強力な機能群もすべて搭載されています。
- M/S(ミッド/サイド)処理: ステレオの真ん中(ミッド)と左右(サイド)で別々のビットクラッシュをかけることができます。「真ん中のボーカルやキックはそのままに、左右に広がっているシンセやリバーブの成分だけをローファイにする」といった高度な空間処理が可能です。
- 最大16倍のアップサンプリング: デジタルエフェクト特有の嫌な音質劣化(エイリアシング・ノイズ)を防ぎ、非常に滑らかで高音質な処理を実現します。
- A-Hプリセット比較機能: 最大8つ(A〜H)の異なる設定を一時保存し、ワンクリックで切り替えて聴き比べができます。どの設定が一番曲に合っているかを直感的に判断できる神機能です。
6. まとめ:音の破壊から繊細な質感作りまでこなす万能ツール
MeldaProductionの「MBitFunMB」は、一見すると「過激な音響破壊ツール」のように思えるかもしれません。しかし実際には、マルチバンド機能によって「既存の音のバランスを壊さずに、新しい質感を付加できる精密なサウンドスケープツール」であることがお分かりいただけたかと思います。
こんな人に特におすすめです!
- Lo-Fiやビンテージ風のザラッとした質感をトラックに加えたい人
- ドラムやベースの低域をクリーンに保ちつつ、抜けの良いエッジ感が欲しい人
- EDMやベースミュージックで、誰も聴いたことのない凶悪なベースを作りたい人
- モジュレーションを駆使して、動きのあるグリッチサウンドを作りたいサウンドデザイナー
もし「手持ちのビットクラッシャーでは、音が痩せてしまって使い物にならない」と悩んでいるなら、ぜひこのMBitFunMBを試してみてください。あなたのトラックに、恐ろしいほどの個性と破壊力が宿るはずです!
[!NOTE] ビットクラッシャー(Bitcrusher): デジタルオーディオのビット深度(解像度)やサンプリングレートを意図的に下げることによって、音質を劣化させるエフェクト。ファミコンのような8ビットゲーム機の音をシミュレートしたり、ボーカルやドラムにザラザラとしたノイジーな質感を加えるためによく使用されます。 マルチバンド(Multiband)処理: オーディオ信号を低域・中域・高域など複数の周波数帯域(バンド)に分割し、それぞれの帯域に対して個別にエフェクトを適用する処理方法。低音の迫力をキープしたまま高音域だけを加工するといった、非常に精密で原音に優しい音作りが可能になります。 LFO(Low Frequency Oscillator): 人間の耳には聞こえないほどの低い周波数の波を出す発振器。これを音量やピッチ、エフェクトのパラメーターなどに割り当てることで、「ウワウワ」とした周期的な音の揺れや変化(変調)を自動的に作り出すことができます。 M/S(ミッド/サイド)処理: ステレオ音声を「中央で鳴っている音(ミッド)」と「左右のスピーカーから鳴っている音(サイド)」に分離して、それぞれを独立して処理する高度なマスタリング・ミキシング技術。空間の広がりをコントロールするのに非常に有効です。
MeldaProductionプラグインのライセンス認証方法
MeldaProductionプラグインのライセンス認証方法はちょっと独自な方式になっているので、迷ったらこちらを参照してみてください。
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