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Softube Weiss Compressor/Limiter レビュー:150万円の伝説を「現代的UI」で手なずける快感

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マスタリングやミックスバスの処理において、「クリアさ」と「音圧」の両立は永遠の課題です。 コンプレッサーをかければかけるほど、音はまとまりますが、同時に「コンプ感」と呼ばれる独特の癖や、高域の曇り、トランジェントの鈍化といった副作用が生じます。 「何も足さない、何も引かない。ただ音圧だけを制御し、音楽的なグルーヴを整えたい」 そんなエンジニアの究極の願望を叶え続けてきたハードウェアがあります。 スイスの精密機器メーカーWeiss Engineeringが誇るデジタルダイナミクスプロセッサー、「DS1-MK3」 です。

Weiss DS1-MK3






その価格は1万ドル(約150万円)を超え、世界中のトップマスタリングスタジオに「鎮座」してきたこの名機は、長らく一部の選ばれたエンジニアだけが触れられる聖域でした。 しかし、Softubeとのコラボレーションにより、その聖域はすべてのDTMerに開放されました。

今回ご紹介するのは、そのDS1-MK3から「コンプレッサー」と「リミッター」の機能だけを切り出し、現代的なワークフローに合わせてUIを一新したプラグイン。 Softube Weiss Compressor/Limiter です。

Softube Weiss Compressor/Limiter 

「DS1-MK3のフルバージョン(全部入り)があるのに、なぜこっちを使う必要があるの?」 そう思う方もいるかもしれません。 しかし、実際に使ってみると、この「Compressor/Limiter」こそが、Weissのサウンドを最も効率的に、かつ深く使いこなすための最適解であることに気づかされます。

なぜなら、このプラグインは単なる切り出し版ではないからです。 本家のハードウェアには存在しない、圧倒的に美しい波形表示(ビジュアライザー)。 そして、複雑怪奇なパラメータを整理し、直感的な操作を可能にした優れたフェイスプレート。 これらは、デジタルの正確無比なサウンドに、アナログのような操作性を与える革命的なアップデートです。

この記事では、Softube Weiss Compressor/Limiterの全貌を、約1万文字にわたり徹底的にレビューします。 世界最高峰の透明度を誇るコンプレッションとはどういう音なのか。 そして、それをあなたのミックスにどう活かせばいいのか。 その答えを一緒に探求していきましょう。

目次

「ゴールド・スタンダード」をすべてのデスクトップへ

Weiss DS1-MK3 という伝説

まず、オリジナルのWeiss DS1-MK3について少し触れておきましょう。 1990年代に登場したこの機材は、デジタル・オーディオ処理の歴史における金字塔です。 それまでのデジタル機材が抱えていた「冷たさ」や「粗さ」を一切感じさせない、シルクのように滑らかで、かつ外科手術のように精密なダイナミクス制御。 それはまさに、マスタリング・エンジニアが求めていた理想のツールでした。 特に、どんなにリダクションしても音が破綻しない「透明性(Transparency)」においては、現代のプラグインを含めてもなお、右に出るものはいないと言われています。

なぜ「Compressor/Limiter」単体プラグインなのか?

Softubeは、DS1-MK3の完全なエミュレーション(Weiss DS1-MK3プラグイン)もリリースしています。 しかし、実機を忠実に再現したその画面は、パラメータが数値で並ぶだけの、いかにも「90年代の実験器具」といった趣で、初見のユーザーを拒絶するようなオーラを放っています。 マスタリングのプロならいざ知らず、作曲やミックスの途中でサッとコンプをかけたい時に、あの画面と格闘するのは骨が折れます。

そこで開発されたのが、この Weiss Compressor/Limiter です。 中身のアルゴリズム(音の計算式)は、DS1-MK3と全く同じ「1:1 コードポート」です。1bitたりとも妥協はありません。 しかし、その操作画面(GUI)は、Softubeが現代のユーザーのためにゼロから設計し直しました。 必要なノブだけが整理して配置され、何が起きているかが波形として目に見える。 つまり、「最高峰のエンジン」に「最新鋭のコクピット」を載せたのが、このプラグインなのです。

製品概要:クリーン、サージカル、インビジブル

コンセプト:Tweak-and-Go(いじって、すぐ完了)

Weiss Compressor/Limiterの最大の特徴は、その二面性にあります。 デフォルトで表示されるメイン画面(フェイスプレート)は、非常にシンプルです。 スレッショルド、レシオ、アタック、リリース。コンプレッサーとして最低限必要なノブが並んでいるだけ。 これらを回すだけで、Weissクオリティの音が手に入ります。 しかし、「Option」メニューを開くと、そこには驚くほど詳細な設定項目が隠されています。 ニー(Knee)の形状、リリースの挙動、サイドチェインフィルターの設定……。 「基本はシンプルに、こだわりたい時だけ深く」という設計思想は、忙しい現代のクリエイターにとって理想的です。

圧倒的なビジュアル・フィードバック

ハードウェアのDS1-MK3には、小さな液晶画面しかありませんでした。 しかし、このプラグインには、画面の半分以上を占める巨大なディスプレイが搭載されています。 ここには、入力波形(グレー)、出力波形(明るいグレー)、そしてゲインリダクションの推移(黄色い線)がリアルタイムで描画されます。 「今、音のどの部分(アタックなのか、余韻なのか)が、どれくらい圧縮されているのか」が一目瞭然です。 耳だけでなく、目でも確認できる。これは、精密なダイナミクス処理において絶大な安心感をもたらします。

ディープダイブ:コンプレッション機能の深淵

それでは、具体的な機能を見ていきましょう。まずはコンプレッサー部です。

フェイスプレートのコントロール

メイン画面のノブは、非常にレスポンス良く動作します。

  • Threshold(スレッショルド):圧縮を開始するレベルを決めます。
  • Ratio(レシオ):圧縮比率です。1:1(圧縮なし)から1000:1(リミッター)まで可変できます。Weissの特徴として、例えば1.5:1や2:1といった低いレシオでの挙動が極めて音楽的です。薄くかけて全体をまとめる「Glue(接着)」効果は絶品です。
  • Attack(アタック):0.02msという超高速から、800msという超低速まで設定可能。スネアのアタックをパチッと残すことも、瞬時に叩いてピークを抑えることも自在です。
  • Release(リリース):ここがWeissの真骨頂です。単なるリリース時間の調整ではありません。後述する「Uni-Release(ユニ・リリース)」機能と連動して動きます。

Uni-Release:魔法のリリースノブ

Weiss Compressor/Limiterには、少し変わった仕様があります。 通常のリリースタイム設定の他に、サイドメニュー内に「Release Fast」「Release Slow」「Average」というパラメータがあります。 これは、入力信号の変動に合わせてリリースタイムを自動可変させるための設定です。 そして、メイン画面にある大きな「Release」ノブは、それらの設定全体を「速い方へ / 遅い方へ」とオフセット(相対移動)させるためのマスターコントロールなのです。 これにより、「基本はオートでいい感じにしておいて、曲のテンポに合わせて少しだけ速く(タイトに)したい」といった調整が、ノブ一つで直感的に行えます。 この挙動こそが、Weissがつまらなく平坦な音にならず、常に音楽的なグルーヴを保てる理由の一つです。

エキスパートメニューの隠されたパワー

画面右側のサイドバーを開くと、より詳細な設定にアクセスできます。

  • Attack / Release Curves:アタックやリリースのカーブ形状を変更できます。リニアに落とすのか、対数的に落とすのか。これにより、コンプの「粘り気」が変わります。
  • Knee(ニー):コンプレッションがかかり始める部分のカーブの丸みです。0.0dB(ハードニー)から1.0dB(ソフトニー)まで調整可能。ボーカルなどにはソフトニーで自然にかけ、ドラムバスにはハードニーでガッツリかける、といった使い分けができます。
  • Safety Factor:Weissを使っていて感じるのは、「どう設定しても音が悪くなりにくい」という安心感(Safety)です。位相の狂いや不自然なポンピングが極限まで抑えられているため、大胆な設定でも破綻しません。

ディープダイブ:リミッター&フィルター機能

コンプレッサーだけでなく、リミッターとフィルターも超一級品です。

2つの新しいリミッター・アルゴリズム

オリジナルのDS1-MK3に搭載されていた「Weiss Original」リミッターに加え、このプラグインにはSoftubeが新たに開発した2つのアルゴリズムが追加されています。

  1. Weiss Original:ハードウェアそのままの音。非常に安全で、ピークを確実に抑えますが、あまり突っ込みすぎると少しソフトに感じることがあるかもしれません。
  2. Type 1 (Modern Loudness):現代的な音圧競争に勝つために設計されたアルゴリズム。トランジェントを維持したまま、高いRMS値を稼ぐことができます。ミックスバスにはこれが最適でしょう。
  3. Type 2 (True Peak):トゥルー・ピーク(インターサンプル・ピーク)を完全に制御するためのモード。ストリーミング配信用のマスタリング最終段では、これを選んでおけば安心です。

これらのリミッターは、コンプレッサーの後段に配置されており、コンプで整えた音の最終的なピーク保護として機能します。

ローパス / バンドパス・フィルター

コンプレッサーの検知回路(サイドチェイン)ではなく、オーディオ信号そのもの にフィルターをかける機能も搭載しています。 しかも、コンプレッサーと連動させることで、「特定の帯域だけを圧縮する」というマルチバンド・コンプ的な使い方が可能です。

  • Low Pass:高域成分をカットします。
  • Band Pass:特定の周波数帯域だけを取り出します。

これを応用すると、このプラグインを「超高性能なディエッサー」として使うことができます。 バンドパスフィルターで歯擦音(5kHz〜8kHzあたり)を狙い撃ちし、そこにコンプレッションをかける。 専用のディエッサープラグインよりも、遥かに細かく、かつクリアに処理できることがあります。Weissのディエッサーとしての優秀さは、実はプロの間では有名な話です。

Parallel Mix(パラレル・ミックス)

現代のプラグインには必須とも言える「Mixノブ(Wet/Dry)」も完備しています。 マスタリングやドラムバスにおいて、強くコンプレッションして迫力を出した音(Wet)と、トランジェントが生きている原音(Dry)を混ぜる「パラレル・コンプレッション」は、音圧とパンチを両立させる常套手段です。 Weissの透明なサウンドで行うパラレル処理は、音が濁らず、非常に美しく仕上がります。

ワークフローと使用シナリオ

では、実際にどのような場面で使うのが効果的でしょうか。

シナリオ1:マスタリングの最終段

やはり王道の使い方はここです。 リミッターモードを「Type 1」または「Type 2」にし、レシオを1.2:1〜2:1程度の低い値に設定。 スレッショルドを下げて、ゲインリダクションが1dB〜3dB程度になるように薄くかけます。 これだけで、ミックス全体がキュッと引き締まり、散らばっていた各楽器が一つにまとまる「接着効果」が得られます。 仕上げにLimiter Gainを上げて、ターゲットとする音圧まで持ち上げれば完了です。

シナリオ2:ドラムバスの密度アップ

ドラムのバス(まとめ)トラックに挿し、レシオを4:1〜10:1と高めに設定します。 アタックを少し遅め(10ms〜30ms)にしてスネアの頭を逃し、リリースをテンポに合わせて調整。 深めにリダクション(-6dBくらい)させてから、Parallel Mixノブで原音とブレンドします。 すると、アタックの抜けはそのままに、胴鳴りの響きとアンビエンス成分が持ち上がり、迫力あるドラムサウンドになります。

シナリオ3:ボーカルのレベル管理

「サージカル(外科的)」な使い方ができるのもWeissの強みです。 ダイナミクスの差が激しいボーカル・トラックに対し、レシオ2:1〜4:1で、アタックを速めにしてピークを抑えます。 Weissの圧倒的な透明度のおかげで、かなり深くコンプをかけても「コンプ臭い(音が詰まって息苦しい)」感じになりません。 まるで、ボーカリストがマイクとの距離を完璧にコントロールして歌っているかのように、自然に音量が揃います。 さらに、前述のバンドパス機能を使って、耳障りな成分だけを抑えることも可能です。

競合プラグインとの比較

市場には他にも優秀なプラグインがありますが、Weiss Compressor/Limiterの位置付けはどうなるでしょうか。

vs Weiss DS1-MK3 (Full Version)

もしあなたが、クロスオーバー周波数を自在に操ったり、エキスパンダー機能を使ったり、ミッドサイド(M/S)ごとの詳細な処理をしたいなら、フルバージョンのDS1-MK3が必要です。 しかし、単に「最高品質のコンプレッサーとリミッターが欲しい」だけであれば、フルバージョンはオーバースペックで、操作が煩雑なだけです。 Compressor/Limiterの方が波形表示も見やすく、作業スピードは圧倒的に速いです。 実際、プロのエンジニアでも「普段はCompressor/Limiterを使い、どうしても込み入った処理が必要な時だけフルバージョンを出す」という人は多いです。

vs Weiss MM-1

前回紹介した Weiss MM-1 は、「マキシマイザー」に特化した製品です。 MM-1は「スタイル」を選んで「Amount」を回すだけという、さらに簡略化された操作系です。 より手軽に音圧を稼ぎたい、色付け(キャラクター)も含めてWeissに任せたい、という場合はMM-1が適しています。 一方、アタックやリリースを自分で細かく調整してグルーヴを作りたい、という場合は、このCompressor/Limiterの出番です。 両者は補完関係にあり、マスタリング・チェーンの中で MM-1 の前段に Compressor/Limiter を置く、という使い方も非常に有効です。

vs FabFilter Pro-C2

FabFilter Pro-C2は、考えうる全ての機能を持った「万能ナイフ」です。視認性も操作性も最高レベルです。 機能面だけで言えば、Pro-C2の方が多機能かもしれません。 しかし、「音の質感(トーン)」においては、やはりWeissに分があります。 Weissを通した時に感じる、あの背筋が伸びるような「品格」や「高級感」は、アルゴリズムの系譜の違いでしょう。 普段使いのPro-C2、ここぞという時のWeiss、という使い分けもアリです。

検索サジェストFAQ:購入前の疑問を解消

Google検索でよく見られるキーワードについてお答えします。

Softube Weiss Compressor/Limiter Price(価格・価値)

定価は決して安くありませんが、150万円のハードウェアと同じ音が手に入ると思えば、バーゲンセールのようなものです。 Softubeは定期的にセールを行っていますし、Weiss Complete Collection などのバンドルで購入すれば、1つあたりの単価はかなり抑えられます。 MM-1やDS1-MK3フルバージョンも含めて揃えたいなら、バンドルが断然お得です。

Softube Weiss Compressor/Limiter Manual(マニュアル)

Softubeのマニュアルは非常に丁寧に作られていますが、基本的に英語です。 ただ、このプラグインに関しては、操作がシンプルなので、マニュアルを熟読しなくても使い始められます。 むしろ、サイドメニュー内の「Toolkit」的な機能については、マニュアルを一度読んでおくと新しい発見があるかもしれません。 また、プラグイン内のツールチップ(マウスオーバーで説明が出る機能)も充実しています。

Softube Weiss Compressor/Limiter Download(ダウンロード・認証)

購入後のインストールは、Softube Centralという管理アプリを使って行います。 ライセンス管理には iLok が必要です(USBドングルは必須ではなく、PC本体認証やiLok Cloudも選べます)。 Softube製品は動作も安定しており、導入でのトラブルは少ない方です。

Softube Weiss Compressor/Limiter Presets(プリセット)

ボブ・カッツ氏をはじめとする著名エンジニアが作成したプリセットが多数収録されています。 「Vocal Leveler」「Drum Bus Smash」「Mastering Gentle」など、用途別に分かりやすい名前がついているので、まずはプリセットを選んでから、Thresholdを調整する、という使い方がおすすめです。 プリセットを見ることで、「プロはこういう設定にするのか!」という勉強にもなります。

結論:一生使える「基準」を手に入れる

プラグインの流行り廃りは激しいですが、Weissのサウンドは過去30年間、常にトップであり続けました。そしておそらく、これからもそうであり続けるでしょう。 なぜなら、それが「透明で正しい音」の基準だからです。

Softube Weiss Compressor/Limiterを手に入れるということは、その「基準」をあなたのスタジオに導入するということです。 迷った時に立ち返れる場所がある。 「このプラグインを通しておけば、音質的には間違いない」という絶対的な信頼感がある。 これは、創作活動において何ものにも代えがたい精神的な支柱となります。

もしあなたが、自分のミックスに「あと一歩のプロっぽさ」が足りないと悩んでいるなら。 あるいは、数あるコンプレッサー・プラグインの沼にハマってしまい、何を信じればいいか分からなくなっているなら。 ぜひ一度、このWeiss Compressor/Limiterを試してみてください。 その澄み切ったサウンドと、音楽的な挙動に触れた瞬間、あなたの悩みは霧が晴れるように消え去るはずです。

「伝説」は、もはや遠い存在ではありません。あなたの指先にあります。

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この記事を書いた人

櫻井徳右衛門のアバター 櫻井徳右衛門 音楽プロデューサー・ミュージシャン

希少種ギターメタラーDTMer

2020年10月より初心者DTMer・ギタリスト向けに音楽制作情報を発信するサイト https://guitar-type.com/ にてDTMプラグインレビューを始める。

2024年3月よりWEB上の活動の場を https://sakutoku.jp に移す。

VSTレビュー公開記事・触ったDTMプラグインは1,000個以上を超える。
ギタリスト・作曲家でもあり、音楽リスナーであることから聞くのも好きでイヤホン・ヘッドホンも集めはじめる。

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