「あの懐かしい映画のような、温かくて広がりにあるストリングスが欲しい」。そう思ったことはありませんか?現代の高音質なオーケストラ音源では出せない、独特の「揺らぎ」と「混ざり合い」を持った70年代のストリングスマシン。その伝説的なサウンドを、DAW上で完璧に再現するのがWaldorf Streichfett VSTです。たった一つのプラグインを入れるだけで、あなたの楽曲は一気にノスタルジックでプロフェッショナルな響きに変わります。実機にも負けない操作性と、圧倒的なコスパを誇るこの「魔法の箱」の魅力を、徹底的に解説します。
目次
最高のレトロ感!Waldorf Streichfett VSTの使い方と魅力
「あの頃」の映画やレコードで聴いた、どこか切なくて温かいストリングスの音色。現代の高解像度なオーケストラ音源では決して出せない、独特の「揺らぎ」と「混ざり合い」を持ったサウンドに憧れたことはありませんか? 70年代から80年代にかけて一世を風靡した「ストリングスマシン(String Machine)」。その伝説的な名機たちのサウンドを、現代のDAW環境に完璧に蘇らせるのが、ドイツの名門シンセメーカーWaldorfが送り出すWaldorf Streichfett VSTです。 実機(ハードウェア版)のStreichfettも高い評価を得ていますが、今回はそのプラグイン版について、サウンドの魅力から使い方、そして他の類似プラグインとの違いまで、徹底的にレビューしていきます。シンセウェイヴやディスコ、あるいは現代的なポップスの隠し味として、この「魔法の箱」がいかに役立つか、その全貌を解き明かしましょう。
Waldorf Streichfett VSTとは?現代に蘇る70年代の「あの」輝き
Waldorf Streichfett(シュトライヒフェット)は、かつての「ストリングスマシン」という種類のシンセサイザーを現代的な技術で再現・再構築した音源です。 「Streichfett」というのはドイツ語で「Spread(パンに塗るもの)」という意味で、転じて「音に厚みを持たせるもの(String Fattener)」というニュアンスが込められています。その名の通り、トラックに塗るだけで楽曲全体がリッチでクリーミーな響きに包まれます。
ストリングスマシン(String Machine)とは何か?
若いクリエイターの方には馴染みがないかもしれませんが、ストリングスマシンとは、まだ本物のオーケストラを録音するのが難しかった時代に、「シンセサイザーでストリングス(弦楽器)の音を出そう」として生まれた楽器です。 代表的な機種としては、ARP Solina String EnsembleやLogan String Melody、Crumar Performerなどがあります。
これらは、現在のPCM音源のように「バイオリンの録音」を再生するのではなく、ノコギリ波などの単純な波形を生成し、特殊な「アンサンブル(コーラス)エフェクト」を通すことで、擬似的にオーケストラのような分厚いサウンドを作っていました。
その結果生まれた音は、本物のストリングスとは似ても似つかないものでしたが、逆にその「シンセサイザー然とした美しさ」が評価され、Disco、Prog Rock、New Waveなど、数々の名盤で使用されることになったのです。Streichfettは、特定の機種1つを真似るのではなく、これら「ストリングスマシン全体」の魅力を凝縮した音源と言えます。
ハードウェア版「Streichfett」との違い・共通点
Waldorfは元々、Streichfettをコンパクトなハードウェア・シンセサイザーとして発売していました。その評価があまりにも高かったため、多くのユーザーからの要望に応える形でプラグイン化(VST/AU/AAX対応)されたという経緯があります。
基本的なサウンドエンジンや機能は、ハードウェア版と全く同じです。しかし、プラグイン版になったことで、以下のメリットが生まれました。
・複数の立ち上げが可能: ハードウェアは1台につき1音しか出せませんが、プラグインならCPUが許す限りいくつでもトラックに立ち上げることができます。
・Total Recall: DAWのプロジェクトを保存すれば、Streichfettの設定もそのまま保存されます。ハードウェアのように、次回起動時にツマミの位置を合わせ直す必要はありません。
・オートメーション: DAW上で音色の変化(モーフィング)を自在に書き込むことができます。これがStreichfettの魅力を最大限に引き出します。
実機譲りの操作性とサウンド!Streichfettの主な特徴
Streichfettの最大の特徴は、「音作りが圧倒的に簡単」であることです。複雑なメニュー階層や、数百個のパラメーターは一切ありません。画面に見えているツマミを回すだけで、誰でも最高にエモい音が作れるように設計されています。
2つのエンジン:StringsセクションとSoloセクション
音作りの核となるのは、完全に独立した2つのサウンドエンジンです。 画面左側のピンク色のエリアが「Stringsセクション」。ここは128ボイスという驚異的なポリフォニー(同時発音数)を持っており、どれだけ和音を押さえても音が途切れることはありません。バイオリン、ビオラ、チェロ、ブラス、オルガン、クワイア(合唱)などの音色が用意されていますが、これらはスイッチで切り替えるのではなく、大きなノブ(Registrationノブ)を回して「モーフィング(滑らかに変化)」させることができます。つまり、「バイオリンとビオラの中間」や、「オーケストラとクワイアが混ざった音」など、無限のバリエーションを作り出せるのです。 画面右側のエリアは「Soloセクション」。ここには8ボイスのポリフォニック・シンセサイザーが搭載されており、ベース、エレピ、クラビネット、シンセサイザー、そして謎の音色「Pluto」などが含まれています。Stringsセクションのフワッとした音に対し、Soloセクションはアタックの効いた音や、輪郭のはっきりした音を担当します。この2つを「Balance」ノブで混ぜ合わせることで、Streichfett独自のレイヤーサウンドが完成します。
音の個性を決定づける「Ensemble」エフェクト
ストリングスマシンの魂とも言えるのが、内蔵された「Ensemble(アンサンブル)」エフェクトです。これは、いわゆるコーラスエフェクトの一種ですが、非常に深く、複雑な揺らぎを生み出します。 Streichfettでは、このエフェクトをボタン一つでON/OFFでき、さらに「String」「Chorus」「String+Chorus」の3つのモードから選べます。 これをONにした瞬間、単調だった電子音が、一気に宇宙的な広がりと温かみを持った「あの音」に変わります。このエフェクトの心地よさこそが、Waldorfの技術力の結晶と言っても過言ではありません。ただの音源ではなく、「エフェクターとしての完成度」が異常に高いのです。
絶妙な変化を生む「Animate」機能と内蔵エフェクト
さらに、Streichfettには「Animate(アニメイト)」というユニークなLFO機能があります。これは、先ほど紹介した「音色を切り替えるノブ(Registration)」を、LFOで自動的に動かす機能です。 これを使うと、コードを弾いている間に、音色が「バイオリン → ビオラ → クワイア → オルガン」のように、ゆっくりと、あるいはリズミカルに変化していきます。これにより、パッチシンセサイザーのような複雑な時間的変化(Evolving Pad)を簡単に作り出すことができます。
また、高品質な「Phaser(フェイザー)」と「Reverb(リバーブ)」も搭載されています。特にフェイザーは、ジャン・ミッシェル・ジャールのような70年代エレクトロニック・ミュージックには欠かせない「シュワシュワ」したサウンドを作るのに必須です。リバーブも、コンサートホールのような自然な響きから、教会のような長い残響まで調整可能で、Streichfettのドリーミーな世界観を完成させる重要なピースとなっています。
他のストリングスマシン音源と何が違う?Streichfettを選ぶ理由
「ストリングスマシン」を再現したプラグインは、実は他にもいくつか存在します。有名なところでは、ArturiaのSolina Vや、GForceのVirtual String Machine (VSM) などがあります。では、あえてWaldorf Streichfettを選ぶ理由は何でしょうか?
Arturia Solina Vなどとの比較
Arturia Solina Vは、特定の機種である「ARP Solina String Ensemble」を徹底的にモデリングした製品です。そのため、「Solinaの音が欲しい!」という指名買いのユーザーにとっては、Solina Vの方が「正解」に近いかもしれません。実機の挙動やノイズまで忠実に再現されています。 一方、Streichfettは「特定の機種のコピー」ではありません。Solina的な音も出せますが、LoganやCrumar、あるいはそれらの混合のような音も出せます。つまり、「ストリングスマシンという概念そのもの」を1つの楽器として再構築しているのです。 「Solinaの音が欲しい」のではなく、「カッコいいヴィンテージ・ストリングスの音が欲しい」のであれば、音作りの幅が広く、キャラクターを自在に変えられるStreichfettの方が、楽曲制作においては汎用性が高いと言えます。
Solina V
「エミュレーション」ではなく「再構築」された音
多くのヴィンテージ・エミュレーション系プラグインは、元のハードウェアの「不便な点」や「ノイズ」まで再現しようとします。それはそれで味わい深いですが、現代のクリアなミックスの中では扱いづらいこともあります。 Streichfettの音は、ヴィンテージの質感を保ちつつも、非常に現代的でハイファイです。低域は太く、高域は煌びやかで、ノイズレス。EQで余計な帯域をカットしなくても、そのままオケに混ざります。 「懐かしい音がするのに、音質は近未来的」。この絶妙なバランスこそが、Waldorfというメーカーの真骨頂であり、他のレトロ系音源にはない強みです。
驚くほど軽いCPU負荷
これは地味ながら非常に重要なポイントです。最近のリアルなモデリング音源は、CPU負荷が高いものが増えています。 しかしStreichfettは、独自のDSP技術により、動作が非常に軽快です。 ノートパソコンや、スペックの低いPCでも、何トラックも同時に立ち上げることができます。レイヤー(重ね録り)がキモとなるストリングス・パートにおいて、CPUパワーを気にせずガンガン重ねていけるのは、制作のスピードアップに直結します。
実際に使って分かったStreichfett VSTの魅力・メリット
ここでは、私が実際に楽曲制作でStreichfettを使用して感じた、具体的なメリットを紹介します。
混ぜるだけで馴染む「魔法」のパッドサウンド
Streichfettの最大の魅力は、ミックスにおける「馴染みの良さ」です。 通常のシンセでパッドを作ると、どうしても他の楽器とぶつかったり、音が前に出すぎたりすることがあります。しかし、Streichfettの音は、不思議なほど他のパートと喧嘩しません。 ギターロックのバックに薄く敷いたり、ピアノの音にレイヤーして厚みを出したり、あるいはEDMのブレイクで主役を張ったりと、どんな場面でも「接着剤」のような役割を果たしてくれます。とりあえずStreichfettを薄くかけておけば、曲全体がリッチでプロっぽい雰囲気になる。まさに「魔法の箱」です。
プリセット管理のしやすさとDAW連携
プラグイン版ならではのメリットとして、プリセット管理のしやすさが挙げられます。 カテゴリ分けされたブラウザから、気分に合った音を選ぶだけでOK。もちろん、自分で作った音色も名前をつけて保存できます。 また、Animate機能のスピードや深さを、DAWのテンポに同期させることができるのも大きいです。BPMを変えても、うねりの周期が自動的に追従してくれるため、ライブパフォーマンスでも威力を発揮します。
シンプルイズベストなユーザーインターフェース
画面を見れば分かる通り、Streichfettには「隠しパラメータ」のようなものがほとんどありません。 全ての機能が1画面に収まっており、音の経路(シグナルフロー)も一目瞭然です。「ここを回せば音が変わる」という因果関係がはっきりしているので、シンセサイザーの知識がない初心者の方でも、直感的に音作りを楽しめます。 この潔い設計は、音作りに悩む時間を減らし、曲作りに集中させてくれます。
購入前に知っておくべき注意点・デメリット
絶賛ばかりしていても嘘くさいので、購入前に知っておくべき「Streichfettが苦手なこと」も正直にお伝えします。
生楽器のストリングス(バイオリン等)とは全く別物
当たり前ですが、これは「ストリングス(弦楽器)」のシミュレーターではありません。もしあなたが、映画音楽で使うような「リアルなオーケストラ・サウンド」や、弦の擦れる音、ピッチカートのような奏法を求めているなら、Streichfettは間違いなく不向きです。 購入する際は、必ずデモ音源を聴いて、「これはシンセサイザーである」ということを理解しておく必要があります。
音色のバリエーション(得意な範囲)はある程度限定的
Streichfettは、ストリングスマシンの音を作ることに特化しています。そのため、SerumやMassiveのような「何でもできる万能シンセ」ではありません。
あくまで「70s〜80s風のストリングスやパッド、ブラス、エレピ」を作るための専用機です。最新のダブステップのようなワブルベースや、EDMのプラックサウンドを作ろうとしても、期待通りの音は出ないでしょう(頑張れば近い音は出ますが、餅は餅屋です)。
ベロシティ対応などの細かな挙動
オリジナルのストリングスマシンは、鍵盤を強く弾いても弱く弾いても音量が変わらない(ベロシティに反応しない)ものが主流でした。 Streichfettもその仕様をある程度踏襲しており、デフォルトのプリセットではベロシティ感度が低めに設定されていることが多いです(設定で変更は可能です)。ピアニストのように抑揚をつけて演奏したい場合は、少し設定をいじる必要があるかもしれません。
実践!Streichfettを使ったシンセウェイヴ制作術
「いい音なのは分かったけど、どうやって曲に使えばいいの?」という方のために、Streichfettの真価を発揮する簡単なトラックメイク術をご紹介します。
STEP 1: アルペジオに「残響」を付加する
まず、DAW付属のシンセで、短めの音(プラック)を使ったアルペジオフレーズを作ります。 次に、Streichfettを立ち上げ、同じMIDIデータをコピーします。Streichfett側は「Strings」セクションのみを使用し、アタック(Crescendo)を少し遅く、リリースを長めに設定します。 こうすると、プラック音の後にStreichfettの美しい残響が追従し、空間が一気に広がります。単なるアルペジオが、映画のサウンドトラックのような深みのあるシーケンスに変わります。
STEP 2: 「Solo」セクションでベースラインを強化
シンセベースのトラックにも、Streichfettをレイヤーしてみましょう。 「Solo」セクションの「Bass」を選択し、StringsセクションはOFFにします。オリジナルのベース音源にStreichfettの「ゴリッ」としたデジタルベースを薄く重ねることで、音が太くなり、ミックスの中で埋もれにくくなります。
STEP 3: オートメーションで「Animate」を動かす
サビの盛り上がり部分では、「Registration」ノブをゆっくり動かすオートメーションを書きます。 最初は「Choir(合唱)」のような音から始まり、徐々に「Violin」のような鋭い音に変化させることで、聴いている人に高揚感を与えることができます。Animate機能を使えば、これをLFOで自動的に行うことも可能です。
Streichfett VSTはどんなユーザーにおすすめ?
シンセウェイヴ・80sリバイバル系のクリエイター
The WeekndやDua Lipaのヒット曲のような、80年代リバイバル・サウンドを作りたいなら、Streichfettは「必須科目」と言っても過言ではありません。プリセットを選ぶだけで、あの時代の空気が部屋中に満たされます。
楽曲の隙間を埋める「接着剤」を探している人
ジャンルを問わず、「サビで音の厚みが足りない」「イントロが寂しい」といった悩みを抱えている人におすすめです。こっそりStreichfettを混ぜるだけで、音のスカスカ感が解消され、リッチな質感になります。
複雑なシンセ操作に疲れた人
「音作りはしたいけど、マトリックスとかエンベロープとか見たくない!」という直感派のあなたへ。Streichfettなら、適当にノブを回しているだけで「使える音」が勝手に出来上がります。
よくある質問 (Q&A)
Q1: ハードウェア版の音と比べてどうですか?
A1: 基本的なサウンドエンジンは同じなので、音質はほぼ同一と言っていいでしょう。ただし、ハードウェア版はDA/AD変換を通すことによる「回路の味」のようなものが僅かにあるかもしれません。しかし、ブラインドテストで聞き分けられる人は稀でしょう。利便性を考えれば、現代の制作環境ではプラグイン版に圧倒的な分があります。
Q2: M1/M2/M3 Mac (Apple Silicon) には対応していますか?
A2: はい、最新バージョンではApple Siliconにネイティブ対応しています。VST3、AU、AAXフォーマットで快適に動作します。
Q3: デモ版はありますか?
A3: Waldorf公式サイトや代理店のサイトで、期間限定のトライアル版などが提供されている場合があります。まずは自分の環境で動作するか、音が好みかを確認することをおすすめします。
Q4: プリセットはハードウェア版と互換性がありますか?
A4: はい、互換性があります。ハードウェア版で作ったSysExデータをプラグイン版に読み込ませたり、その逆も可能です。実機ユーザーの方も、ライブラリアン(管理ソフト)としてプラグイン版を活用できます。
購入方法・価格とセール情報
Waldorf Streichfett VSTは、以下のサイトで購入可能です。
- Waldorf Music 公式サイト: ドイツの公式サイト。ユーロ決済になります。
- Plugin Boutique: ポイント還元や、月替わりの無料プラグイン(Giveaway)がもらえることが多く、最もお得な購入ルートの一つです。
- 国内代理店: 日本語でのサポートが必要な場合は、国内の楽器店や代理店経由で購入するのが安心です。
価格は、他のシンセ音源に比べると比較的リーズナブルです。また、ブラックフライデーやサマーセールなどの時期には、大幅な値引きが行われることもあります。「欲しいものリスト」に入れて、セールのタイミングを狙うのも賢い方法です。
まとめ:Streichfett VSTで楽曲に「魔法」のレイヤーを
今回は、Waldorf Streichfett VSTについてレビューしました。 このプラグインは、単なる「懐古趣味」のためのツールではありません。70年代のソウルを持った音を、現代の楽曲の中で「新しいマテリアル」として自由に使える、非常にクリエイティブな楽器です。 Streichfettのツマミを回して、音がシュワシュワと変貌していく瞬間、あなたは時間を超えた音楽の旅に出ることになるでしょう。 デジタルなのに温かい、チープなのにゴージャス。そんな矛盾した魅力を持つ「魔法のストリングス」を、ぜひあなたの楽曲にも取り入れてみてください。
懐古趣味だけじゃない、未来のサウンドを作るツール
70年代の音色は、一周回って今、最も「未来的」なサウンドとして再評価されています。Streichfettは、過去を振り返るためではなく、未来の音楽を作るために生まれたのです。さあ、あなたもこのピンク色の箱を開けて、極上のストリングス・ワールドへ飛び込みましょう!
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