「今まで数え切れないほどのシンセを触ってきたけど、どれもどこか似たり寄ったりだ…」そんな風に感じていませんか?もしあなたが、誰も聴いたことのない「新しいアコースティック楽器」の音を探しているなら、Expressive E Imagineこそが、その答えです。
物理モデリングの名門AASとのコラボによって生まれたこのシンセは、現実には存在しない幻想的な響きを、驚くほどリアルな質感で生み出します。この記事では、Imagineの独自の音作りからNoisy 2との違いまで、その全貌を徹底解剖します。
目次
Expressive E Imagine レビュー:未知の楽器が生み出す、かつてない有機的サウンドの世界へ
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シンセサイザーにおける「新しい音」とは何でしょうか? 多くの場合、それはより複雑なウェーブテーブルであったり、より太いアナログサウンドであったりします。しかし、私たちが心のどこかで求めているのは、そうした「電子音の延長線上」にある新しさではなく、まるでこの世界のどこかに実在するかのような、しかし誰も見たことのない「未知のアコースティック楽器」 の響きではないでしょうか。
指先一つで、ガラスでできた巨大な鐘を叩いたような音がする。あるいは、何キロメートルにも及ぶ長い弦を、風が撫でるような音がする。そんな空想上の楽器を、物理法則に基づいて精密にシミュレートし、現実の音として奏でることができるシンセサイザー。それが、フランスの革新的メーカーExpressive Eが送り出した「Imagine」 です。
このレビュー記事では、物理モデリング音源の常識を覆したと言われる「Expressive E Imagine」について、その魅力から使いこなし術まで、余すところなく徹底的に解説します。既存のシンセサイザーやサンプリング音源に限界を感じ、楽曲に「生命」を吹き込みたいと願うすべてのクリエイターにとって、このプラグインは間違いなく強力な武器となるはずです。
Expressive E Imagineとは?「未知のアコースティック」を創造するシンセ
Expressive E Imagineは、単なるソフトウェア・シンセサイザーではありません。それは、プレイヤーの想像力(イマジネーション)を具現化するために設計された、創造性のための実験室 です。
物理モデリングの名門AASとのコラボレーション
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Imagineを語る上で避けて通れないのが、カナダのデベロッパーApplied Acoustics Systems Plugins(AAS) の存在です。AASといえば、エレクトリックピアノ音源の金字塔「Lounge Lizard」や、ギター音源「Strum GS」、そして物理モデリングシンセの傑作「Chromaphone」などで知られる、この分野のパイオニアです。
Expressive Eは、自社の強みである「表現力(Expressiveness)」を最大限に活かせる音源を開発するために、このAASと手を組みました。AASが長年培ってきた、物体の振動や共鳴を数式で再現する高度な物理モデリング技術と、Expressive Eが持つ直感的で音楽的なインターフェース設計の哲学。この2つが融合することで、これまでの物理モデリング音源にありがちだった「設定が難しくて使いこなせない」「音はリアルだけど無機質」といった課題を見事に克服しています。
「リアル」ではなく「イマジナリー(架空)」な楽器を作る意味
物理モデリングというと、「いかに本物のピアノやギターに近づけるか」という再現性が重視されがちです。しかし、Imagineのアプローチは全く異なります。その名の通り、「イマジナリー(架空)」な楽器を作る ことに主眼が置かれているのです。
例えば、「プラスチックでできたマリンバを、バイオリンの弓で弾いたらどんな音がするか?」「巨大な金属のチューブの中に息を吹き込みながら、同時にハンマーで叩いたら?」 現実世界では物理的に製作不可能な楽器、あるいは演奏不可能な奏法であっても、Imagineの中ではいとも簡単に実現できます。既存の楽器を模倣するのではなく、聴き手の記憶にない新しい音 を創り出すこと。これこそが、Imagineが他のシンセサイザーと一線を画す最大の理由です。
サンプリング音源には出せない「有機的な変化」の魅力
現代の音楽制作では、高品質なサンプリング音源(PCM音源)が主流です。しかし、録音されたサンプルはあくまで「その瞬間の音の記録」であり、再生するたびに同じ波形が繰り返されるだけです。これを変化させるには、フィルターで削ったりエフェクトをかけたりするしかありません。
対してImagineの物理モデリングは、音が出るプロセスそのものをリアルタイムに計算しています。そのため、鍵盤を叩く強さ、音の長さ、前後の音の重なり具合によって、響きが有機的に、かつ無限に変化 します。 強く弾けば単に音が大きくなるだけでなく、素材が激しく振動して倍音が増え、硬質なアタック感が生まれます。弱く弾けば、優しく撫でるような丸い音になります。この、まるで生き物のように反応するレスポンスこそが、人間の感情を揺さぶる「エモい」サウンドの正体なのです。
音作りの仕組み:2つのレイヤーで描く無限の響き
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Imagineのサウンド生成の核となるのは、2つの独立したインストゥルメント・レイヤーです。これらを重ね合わせる(レイヤーする)ことで、複雑で深みのある音色を作り出します。
Excise(励振)とResonator(共鳴)の組み合わせ
各レイヤーは、音が鳴るきっかけを作る「Exciter(エキサイター)」 と、その振動を増幅・共鳴させる「Resonator(レゾネーター)」 という2つの要素で構成されています。 これは現実の楽器の構造と同じです。例えばギターなら、「弦を弾く指やピック」がExciterで、「弦そのものとギターのボディ」がResonatorにあたります。Imagineでは、この組み合わせを自由に、かつ非現実的なレベルでカスタマイズできるのです。
マレット、ノイズ、シンセ音…多彩な音の「きっかけ」
Exciterセクションでは、音の立ち上がり(アタック)のキャラクターを決定づけます。
Mallet(マレット) : 木琴や鉄琴を叩くバチのような音。硬さ(Stiffness)やノイズ成分を調整でき、コツコツとしたパーカッシブな音から、柔らかいポーンという音まで作れます。
Noise(ノイズ) : 息を吹き込むような音や、弓で擦るような持続的なノイズ。管楽器や擦弦楽器のようなニュアンスを出すのに不可欠です。
Arbitrary(任意波形) : シンプルなシンセ波形やクリック音など、物理的な衝撃以外の信号を入力することも可能です。
面白いのは、これらをモーフィングさせたり、混ぜ合わせたりできる点です。「ハンマーで叩いた瞬間に、弓で擦り始める」といった複合的なアーティキュレーションも、Exciterの設定次第で表現可能です。
チューブ、板、弦…振動する「物体」の選び方
Resonatorセクションは、Imagineの音色の「魂」を決定する最も重要な部分です。ここでは、振動する物体の形状や素材を選択します。
String(弦) : ギターやバイオリン、ピアノのような弦の響き。
Beam(棒・板) : 木琴、鉄琴、カリンバのような、棒状の物体の響き。
Marimba(マリンバ) : Beamに似ていますが、より中空で暖かみのある、特定のマリンバ特有の共鳴管を含んだような響き。
Drumhead(膜) : 太鼓の皮のような、膜の振動。パーカッション的な音はもちろん、独特の「張り」のあるシンセ音にも使えます。
Plate(金属板) : シンバルやゴング、あるいはリバーブプレートのような、金属板の複雑な倍音と長い余韻。
Tube(筒・管) : フルートやパイプオルガン、あるいは竹のような、空洞のある管の共鳴。
さらに、これらの物体に対して「Material(素材)」 や「Tone(音色)」 、「Decay(余韻)」 といったパラメーターを調整できます。「木でできた弦」や「ガラスでできた太鼓」といった矛盾した設定も自由自在です。特に「Decay」を極端に長く設定した時の、永遠に響き続けるかのようなドローンサウンドは、アンビエント作家にはたまらない美しさがあります。
圧倒的な表現力を生むモジュレーションとエフェクト
物理モデリングエンジンだけでも魅力的ですが、Imagineが「Expressive E」の名を冠する所以は、その変態的とも言える(褒め言葉です)強力なモジュレーション機能にあります。
音に生命を吹き込む「MSEG」の魔法
Imagineには、一般的なADSRエンベロープやLFOの代わりに、MSEG(Multi-Stage Envelope Generator) と呼ばれる多機能なカーブジェネレーターが搭載されています。 これは、簡単に言えば「自分で好きな形を描けるエンベロープ」です。単純な「アタック→ディケイ」の形だけでなく、「アタックして、少し下がって、波打って、また上がって…」といった複雑な時間的変化をプログラムできます。
これをExciterの強さやResonatorの明るさに適用することで、 「叩いた瞬間は硬いが、余韻が広がるにつれて柔らかく揺らぎ、最後にふっと消える」 といった、極めて物語性の高い音色変化を作り出すことができます。プリセットを聴いて「生きているようだ」と感じる音の正体は、このMSEGによる緻密なコントロールにあることが多いのです。
4つのマクロでサウンド全体を一変させるダイナミクス
Imagineの画面下部には、4つの巨大なマクロノブ(Macro)が配置されています。これらは、単なる「Cutoff」や「Reverb」といった単純なパラメーターではありません。1つのノブに、複数のパラメーター(例えば、Exciterの硬さ+Resonatorの素材感+エフェクトの深さ)を同時にアサインできます。
Macro 1 (Expression) : 多くの場合、音の強弱や明るさなど、演奏のダイナミクスに直結する変化が割り当てられています。
Macro 2 (Timbre) : 音色のキャラクターを大きく変える役割。例えば「木」の質感から「金属」の質感へモーフィングするなど。
Macro 3 & 4 (Variation) : リズミックな変化や、空間的な広がりの調整など、より装飾的な変化を担当します。
これらのマクロは、Expressive Eのハードウェアコントローラー「Touché」 と完璧に連動するように設計されています。Touchéのトッププレートを手で押し込んだり叩いたりするだけで、この4つのマクロが有機的に連動し、指先の感情がそのまま音の奔流となって溢れ出します。もちろん、一般的なMIDIコントローラーのモジュレーションホイールやノブにアサインしても十分にその効果を感じることができます。
空間を彩る高品質な内蔵エフェクト群
Imagineには、サウンドを仕上げるための高品質なエフェクトも内蔵されています。
Frequency Shifter / Vibrato : 物理モデリング特有の金属的な響きと相性の良い周波数変調系。
Distortion / Bitcrusher : 美しい音をあえて汚し、Lo-Fi感や攻撃性を加える歪み系。
Filter / EQ : 特定の帯域を削り出し、ミックスに馴染ませるための音質調整。
Delay / Reverb : 空間の広がりを演出する残響系。特にReverbはPlate系の上質なものが搭載されており、Imagineの幻想的なサウンドスケープを完璧に補完します。
これらのエフェクトパラメーターも全てマクロやMSEGで変調可能です。「音の余韻部分だけに深くディストーションがかかる」といったダイナミックな演出も、DAWのオートメーションを書かずにパッチの中で完結させることができます。
徹底比較:Imagine vs Noisy 2 どっちを選ぶべき?
Expressive Eには、Imagineの他に「Noisy 2」 という強力なシンセサイザーもあります。どちらも「表現力」を売りにしているため、どちらを買うべきか迷うユーザーも多いでしょう。ここでその違いを明確にしておきます。
Imagine:純粋な物理モデリングによる「美しさと繊細さ」
エンジン : 100% 物理モデリング(AAS技術)。
得意な音 : ベル、マレット、弦楽器、木管楽器、エスニック、幻想的なパッド、有機的なテクスチャ。
音の傾向 : 繊細、クリア、粒立ちが良い、アコースティックに近い、空想的。
おすすめな人 : 劇伴作家、アンビエント作家、他にはない美しい音を探している人、「架空の民族楽器」のような音が欲しい人。
Noisy 2:ハイブリッド方式による「太さと攻撃性」
エンジン : ノイズ・オシレーター + 物理モデリング・フィルター(レゾネーター) + 減算合成。
得意な音 : アナログシンセ風のリード、太いベース、サイケデリックなFX、攻撃的なプラック、MPEを駆使した激しい演奏。
音の傾向 : 太い、歪み感が心地よい、エレクトロニック、エネルギッシュ、実験的。
おすすめな人 : トラックメイカー、EDM/テクノプロデューサー、ライブパフォーマンスで派手なソロを弾きたい人、Osmoseの機能をフル活用したい人。
結論 : 「美しく、心に染み入るような、アコースティックの延長にある音」が欲しいならImagine 。 「太く、エネルギッシュで、シンセサイザーらしい快感のある音」が欲しいならNoisy 2 。 もちろん、予算が許せば両方手に入れるのがベストです。この2つはサウンドのキャラクターが被らないため、相互に補完し合う関係にあります。
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導入前に知っておきたいポイント(操作性・負荷)
素晴らしいシンセであることは間違いありませんが、導入前に知っておくべき注意点もいくつかあります。
英語マニュアルでも大丈夫?直感的なUIの恩恵
残念ながら、今のところImagineのマニュアルやチュートリアル動画の多くは英語です。しかし、心配はいりません。Imagineのユーザーインターフェース(UI)は極めて視覚的で直感的です。 パラメーターの多くはアイコンやグラフィックで表示されており、「叩く強さ」や「弦の長さ」といった物理的な意味が理解できれば、英語を読み解かなくても音作りが可能です。また、各ノブを回した時に音がどう変化するかがリアルタイムにアニメーション表示されるため、実際に触りながら感覚的に機能を学習していくことができます。
CPU負荷は?快適に使うためのスペック目安
物理モデリングは、「音の瞬間の計算」を常に行うため、一般的にサンプリング音源や減算合成シンセよりもCPU負荷が高くなる傾向があります。 Imagineも例外ではありません。特に、発音数(ポリフォニー)を多く使い、長い余韻のエフェクトをかけたプリセットを和音で弾くと、古いPCではCPUメーターが跳ね上がることがあります。 快適に使用するための目安としては、近年のApple Silicon (M1/M2/M3) 搭載Mac、またはIntel Core i7 / Ryzen 7以降のCPUを積んだWindowsマシンが推奨されます。もしスペックに不安がある場合は、DAW上で「フリーズ(オーディオ化)」機能を活用するか、Imagine内の設定で最大発音数を制限するなどの工夫が必要になるかもしれません。
Touchéがなくても楽しめる?(Standard Controllerでの操作感)
「Expressive Eの製品だから、Touchéがないと意味がないのでは?」と思う方もいるかもしれません。 確かにTouchéがあれば最高の体験ができますが、一般的なMIDIキーボードやパッドコントローラーでも十分に楽しめます。 プリセットの多くは、モジュレーションホイール(CC1)やアフタータッチ、ベロシティに対して効果的にマッピングされています。通常の鍵盤で弾くだけでも、その有機的な音色変化や、物理モデリング特有のレスポンスの良さは体感できます。まずはソフトウェアだけ導入し、その表現力の深さに魅了されたら、後からTouchéやOsmoseの導入を検討するというステップアップも大いにありです。
実践!Imagineで「未知の音」を創るレシピ
最後に、Imagineを使ってゼロから面白い音を作るための、簡単なレシピ(設定例)を3つ紹介します。
Recipe 1: 水晶の雨 (Crystal Rain)
キラキラと降り注ぐ、美しく冷たいテクスチャサウンドです。
Layer 1 : Resonatorを「Marimba」に設定。Materialを「Glass(ガラス)」寄りにし、Decayを長めに。Exciterは「Mallet」で、硬さを高めに設定。
Layer 2 : Resonatorを「Plate」に設定。こちらもMaterialを金属寄りに。PitchをLayer 1より1オクターブ高く設定。
Modulation : MSEGで速い周期のランダム波形を作り、両方のレイヤーの「Pan(定位)」と「Exciter Stiffness」に微量にアサイン。
これで、鍵盤を押している間中、左右から不規則にガラスや金属が弾けるような、幻想的な雨音が生成されます。
Recipe 2: 巨神の足音 (Titan’s Stomp)
映画の予告編に使えそうな、重厚で衝撃的なインパクトサウンドです。
Layer 1 : Resonatorを「Drumhead」に設定。Tension(張り)を緩くし、低音が出るようにTuneを下げる。Exciterは「Mallet」で、Noise成分を多めに混ぜる。
Layer 2 : Resonatorを「Tube」に設定。非常に長く設定し、地底から響くような低周波を作る。
Effects : DistortionとReverbを直列にかける。Distortionで倍音を荒々しく強調し、Reverbで巨大な空間(Hall)を演出。
低音域を強く叩くと、巨大な物体が地面を叩きつけたような、空気が震える重低音が鳴り響きます。
Recipe 3: 忘れられた古代の笛 (Ancient Flute)
どこか懐かしく、しかし異国情緒漂う、息使いを感じるリード音色です。
Layer 1 : Resonatorを「Tube」に設定。Exciterを「Noise」にし、息を吹き込む音を作る。
Layer 2 : Resonatorを「Beam」に設定。木の質感を出し、管楽器のボディの共鳴をシミュレート。音量は控えめに。
Modulation : アフタータッチ(Pressure)を、Exciterの「Noise Level」と、わずかな「Pitch揺らぎ(ビブラート)」にアサイン。
Effects : 浅めのDelayをかける。
優しく弾けば虚ろな音に、強く押し込めば激しく息が吹き込まれ、音が裏返るような(オーバーブロウ)表現が可能になります。
まとめ:あなたの想像力を解放する鍵
Expressive E Imagineは、単なる道具の枠を超え、クリエイターの想像力を刺激し、新しいアイデアを引き出してくれるパートナーです。「もしもこんな楽器があったら…」という子供のような純粋な好奇心を、最高レベルのオーディオ技術で現実のものにしてくれる。それがImagineというシンセサイザーの本質です。
既存のプリセットを鳴らすだけでも十分にその価値を感じられますが、ぜひ自分だけの「イマジナリー・インストゥルメント」の創造に挑戦してみてください。そこで生まれた音は、世界であなたしか持っていない、あなただけの「声」となるはずです。論理や理論を超えた、感性そのものの響きを。Imagineで、あなたの音楽に新しい生命を吹き込んでみませんか?
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