「高いプラグインを買ったのに、いいアイディアが浮かばない」 そんなDTMerの悩みを、わずか数ドルの「遊び心」が解決してくれるかもしれません。
『Thenatan TAWUS』は、4つのサンプラーレイヤーとXYパッドを駆使し、偶然から生まれる「奇跡のサウンド」を見つけ出すためのユニークな音源です。 TrapやLo-Fiに最適な「埃っぽい」音色と、直感的な操作感。この記事では、コスパ最強の秘密兵器TAWUSの全貌をレビューします。
Thenatan TAWUS
目次
Thenatan TAWUSレビュー:偶発性を味方につける魔法の音源
DTM界隈には、数万円する高級シンセから無料のものまで、無数のプラグインが存在します。そんな中、時折「数百円~数千円」という驚異的な安さで販売されながら、独特の存在感を放つデベロッパーがいます。その一つが Thenatan です。(シンセやバーチャル楽器は1万円とちょっとします)
今回は、そんなThenatanのプラグインの中でも、特に個性的で創造性を刺激するマルチレイヤー・バーチャルインストゥルメント、TAWUS(タワス) をご紹介します。 「高い機材を使えば良い曲ができるわけではない」ということを改めて教えてくれる、遊び心満載のツールの全貌に迫ります。
4つのレイヤーが織りなす「無限」のサウンドスケープ
TAWUSを一言で表すなら、「音の実験室」です。 一般的なシンセサイザーのようにゼロから波形を作るのではなく、あらかじめ用意されたサンプルを重ね合わせて(レイヤリングして)新しい音を作る方式を採用しています。
特筆すべきは、4つのサンプラーエンジン が独立して動いている点です。
「ピアノ」+「ベル」+「ノイズ」+「ストリングス」といった具合に、全く異なる性質の音を4つ混ぜ合わせることで、単体では表現できない複雑で深みのあるサウンドを瞬時に生み出します。
Trap, Hip Hop, Lo-Fiに刺さる「ダークでチル」な質感
収録されている600種類のサンプルは、どれも現代的なTrap、Hip Hop、Lo-Fi、R&Bといったジャンルに最適化されています。 クリアでハイファイな音というよりは、どこか埃っぽく、ダークで、アンビエントな質感 を持ったサンプルが多いのが特徴です。 DrakeやTravis Scottの楽曲で聴けるような、水中に沈んだようなパッドや、不穏なベルサウンドが好きな人にはたまらない音色が揃っています。
TAWUSの核心:シンプル操作で複雑な音を作る仕組み
GUI(画面)は非常に派手で、孔雀(TAWUSはペルシャ語などで孔雀の意味)のような極彩色ですが、操作体系は驚くほどシンプルです。
4 Independent Layers:600のサンプルを重ねる実験室
画面の左右に配置されたA, B, C, Dの4つのスロットには、それぞれ独立したサンプラーが割り当てられています。 ユーザーは、6つのバンクに分類された合計600の波形から好きなものを選んでアサインします。 各レイヤーには、ADSR(エンベロープ)、パン、ピッチ、フィルターといった、シンセサイザーとしての基本的なパラメータが完備されています。「レイヤーAのアタックを遅くしてパッドにし、レイヤーBのアタックを早くしてプラックにする」といった音作りも簡単です。
XY Pad:直感的操作で4つの音をブレンド
TAWUSの最大の特徴であり、最も楽しい機能が、画面中央に鎮座する XY Pad です。 このパッド上のポイント(カーソル)をマウスでぐりぐりと動かすことで、4つのレイヤーの音量バランスをリアルタイムに変化させることができます。
- 左上に寄せればレイヤーAとCが強調される
- 中心なら全ての音が均等に混ざる
このように、演奏しながら音色に動きをつけるパフォーマンスツールとしても優秀です。オートメーションを書けば、曲の展開に合わせて徐々に表情を変えるパッドサウンドなども容易に作成できます。
Randomize機能:一瞬でアイデアを生み出す「サイコロ」
「音を選ぶのが面倒くさい」「どんな組み合わせが良いかわからない」 そんな時に活躍するのが、サイコロアイコン(Randomize機能) です。 これをクリックすると、4つのレイヤーのサンプルがランダムに入れ替わります。
正直なところ、出てくる音の9割は「使い物にならない音」かもしれません。しかし、残りの1割に 「自分では絶対に思いつかない奇跡のサウンド」 が混ざっています。 この「Happy Accident(嬉しい偶然)」こそが、TAWUSを使う最大の醍醐味です。行き詰まったビートメイクの救世主となるでしょう。
音作りを加速させる14の内蔵エフェクト
音を混ぜた後は、内蔵エフェクトで仕上げます。TAWUSには以下の14種類のエフェクトが搭載されています。
- Tremolo, Panner, Phaser, Pumper, Wobble
- Compressor, EQ, Reverb, Delay
- Bit Crusher, Saturation, Filter, Widener, Vibrato
“Deceivingly Simple” なエフェクトチェーン
開発者が “Deceivingly Simple(一見シンプルだが実は奥深い)” と自称するように、各エフェクトのパラメータは必要最小限に絞られています。 細かい調整はできませんが、裏を返せば「ツマミを回すだけでそれっぽい音が完成する」ように調整されています。
動きを加えるTremolo, Wobble, Pumper
特に、Wobble(ピッチの揺れ)や Pumper(サイドチェーンのようなダッキング効果)は、Lo-Fi Hip Hopなどには欠かせないエフェクトです。 これらをDAW側のプラグインで足すことなく、TAWUS内部だけで完結できるのは、制作スピードを著しく向上させてくれます。
実際の使用感:メリットとデメリット
メリット:とにかく「早い」アイデア出しに最適
TAWUSの魅力は、その スピード感 に尽きます。 プリセットを選び、XYパッドを動かし、気に入らなければランダムボタンを押す。この数クリックの動作だけで、曲のインスピレーションの源となる音が生成されます。 また、動作も比較的軽く、CPU負荷を気にせずレイヤーサウンドを楽しめるのも利点です。
デメリット:細かい音作りには向かない?(GUIの癖など)
一方で、本格的なシンセサイザーとして見ると、物足りない点もあります。 あくまでサンプルの再生機であり、波形そのものを生成・加工する能力はありません。また、GUIが独特で少し見づらかったり、プリセット管理機能がDAW標準のものに比べて使いにくかったりと、安価なプラグイン特有の「癖」はあります。 「狙った音をゼロから精密に作る」という用途には不向きです。
おすすめの活用方法:TAWUSでビートに個性を
ドープなパッドサウンドを「探す」旅
TAWUSは、主役級のリードサウンドを作るよりも、楽曲の背景を埋める パッドやアトモスフィア を作るのに最適です。 ランダム生成を繰り返し、少し不気味で美しい、唯一無二のアンビエンスを探してみてください。それをバックに流すだけで、ビートに深みが出ます。
レイヤーで作る、厚みのあるリードやベル
Trap系のビートで使われる、冷たくて太いベルのような音も得意分野です。 「硬いプラック音」と「持続するパッド音」をレイヤーし、サチュレーションとリバーブで空間を広げることで、市販のループ素材にはないオリジナリティのある上モノが完成します。
まとめ:
「またいつものプリセットだ」と飽きを感じているなら、ぜひTAWUSを導入して、偶然性が生み出す新しいサウンドとの出会いを楽しんでみてください。 きっと、あなたのビートメイクに新しい風(と少しの毒気)を吹き込んでくれるはずです。
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