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u-he Twangström 物理モデリングが暴れ狂う最強スプリングリバーブ

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「サンプリング系のリバーブは綺麗だけれど、曲の中で埋もれてしまって存在感がない」 「ギターアンプに付いている本物のスプリング・リバーブのように、荒々しく金属的な響きが欲しい」 「空間系フィルターやLFOを絡み合わせて、リバーブそのものをシンセサイザーのように演奏したい」

現代のクリーンなデジタル録音環境において、私たちがしばしば見失いがちなもの。それは機材が物理的に振動し、電気信号とぶつかり合うことで生まれる「有機的なカオス」です。 ドイツが世界に誇るシンセサイザー・デベロッパー「u-he」がリリースした「Twangström」は、単なる「古いリバーブの復刻」という生ぬるい言葉では決して語れません。これは、あなたのDAWの中に本物の鉄のバネ(スプリング)を何本も張り巡らせ、それをアンプで増幅し、時には物理的に「蹴り飛ばす」ことさえ可能にした、狂気とも言える「物理モデリング・リバーブ」です。

u-he Twangström

本記事では、この孤高の存在であるTwangströmの全貌を徹底検証します。3つの異なるスプリング・タンクの強烈な個性、u-he十八番のモジュレーション・マトリクスを使った変態的なサウンド・デザイン、そしてサーフロックから前衛的なダブ・ミュージックに至るまでの実戦的なミックス・テクニックまで。 これを読み終える頃、あなたにとってのリバーブは「音を馴染ませる脇役」から、「楽曲を支配する主役」へと完全に変貌を遂げているはずです。

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目次

1. u-he Twangströmとは?ただのスプリング・リバーブではない理由

世の中には数多くの「ビンテージエミュレーション」が存在しますが、u-heのTwangströmがそれらと一線を画している理由は、その「生い立ち」と「計算方式」にあります。

1.1 Bazilleから独立した「暴れる」物理モデリング

Twangströmの心臓部は、もともとu-heのモンスター級モジュラー・シンセサイザー「Bazille」に内蔵されていたリバーブ・モジュールでした。 Bazilleは極めて実験可能で過激な音作りを得意とするシンセサイザーであり、そこに搭載されていたスプリング・リバーブもまた、非常に「クセ」が強く、狂暴な一面を持っていました。そのリバーブの音色の生々しさに魅了された世界中のユーザーから、「ぜひ単体のエフェクト・プラグインとしてリリースしてほしい」という熱烈なオファーが殺到したのです。

u-heはその要望に応えるだけでなく、単体化にあたってさらに二種類の全く異なるリバーブタンク(Type 8とType 9)を追加し、モジュレーションやフィルター・セクションを大幅に強化しました。 いわば、シンセサイザーの心臓部に組み込まれていた「じゃじゃ馬」を、あらゆる楽器やボーカル、ドラムトラックに接続できるように開放したのが、このTwangströmというプラグインなのです。

1.2 サンプリング(IR)では到達不可能なリアルタイム表現

現在主流となっているコンボリューション・リバーブ(IRリバーブ)は、実在の空間や機材の音をステレオで「録音(サンプリング)」したものです。これは「写真」のように正確ですが、入力される音の強弱によって響き方がダイナミックに変化することはありません。

対してTwangströmは、計算機の中でスプリング(鉄のバネ)の「張力」や「長さ」「質量」などをリアルタイムで計算して音を発生させる「物理モデリング(フィジカル・モデリング)」を採用しています。 強く大きな信号が入力されれば、バーチャルなバネは激しく揺れ、「ガシャン!」という金属的なサチュレーション(歪み)を伴った響きを返します。入力される信号が弱ければ、静かで上品な残響を奏でます。つまり、Twangströmは単なる「エフェクター」ではなく、入力される音に対して物理的に反応する「もう一つの楽器」として振る舞うのです。このリアルタイムでの「非線形な計算」こそが、サンプリングでは絶対に到達不可能な、生き物のようなリバーブサウンドの正体です。

[!NOTE] 物理モデリング (Physical Modeling): 対象となる機材や空間の「物理的な構造」を数式化し、入力信号に対してその数式(バネの振動や空気の抵抗など)をリアルタイムに計算して音の響きを生成する技術。 IR (Impulse Response) リバーブ: 実在の空間でパンという破裂音(インパルス)を鳴らし、その反響音を記録したもの(写真のようなデータ)を使って残響を再現する方式。 Bazille: u-heが開発する、パッチケーブルで自由に回路を繋ぎ合わせて音を作るソフトウェア・モジュラー・シンセサイザー。


2. 3つのビンテージ・タンク・モデルの圧倒的な個性

Twangströmの最大の特徴は、キャラクターが全く異なる3つの「スプリング・タンク(バネの入った箱)」を自由に切り替えられる点にあります。これらを適材適所で使い分けることが、サウンドメイクの第一歩となります。

2.1 Type 4:図太いローエンドと響き(フェンダー・スタイル)

Type 4は、1960年代のクラシックなギター・アンプ(特にFender系の中型〜大型コンボアンプ)に搭載されていた、2本のスプリングを持つ巨大なタンクをモデリングしています。 このタンクの音は、とにかく「図太い」の一言に尽きます。低域のエネルギーが非常に強く、「ドゥン」という重たい残響が特徴です。サーフロックでのテケテケ・ギターや、ブルース・ギターのソロを弾いた際に、アンプの箱全体が鳴っているような豊かなボトムエンドを付加してくれます。 また、ドラムのキックやスネアにうっすらとかけることで、まるでビンテージのドラムルームで録音したかのような、濃厚な空気感を演出する際にも重宝します。

2.2 Type 8:密度の高い残響(マーシャル・スタイル)

Type 8は、よりコンパクトなサイズで、短い3本のスプリングが平行に張られたタンク(Marshallアンプなどに使われる傾向があるタイプ)をモデリングしたものです。 Type 4と比較すると、低域の重さはスッキリとしており、代わりに中高域に特徴的な「密度の高いチャリチャリとした響き」を持っています。「スプリング・リバーブらしさ」と呼ばれる金属的な反響音(ピチョン、という水滴のような音)が最も顕著に現れるのはこのモデルです。 カッティング・ギターやボーカル、あるいはアナログ・シンセサイザーのアルペジオなど、ミックスの中で他のトラックとぶつからずに「キラキラした残響」だけをきれいに目立たせたい場合は、このType 8が第一の選択肢となります。

2.3 Type 9:洗練されたコントロール性を持つ大型タンク

Type 9は、Type 8をベースにしながらも、さらに長いスプリングを使用し、かつバネの中間にジョイント(結合部)を設けた特殊な3本スプリング・タンクです。 このジョイントの存在により、極端な金属的共振やピーキーな高域が適度に抑えられ、非常に「スムーズで洗練された残響」を生み出します。 スプリング・リバーブのキャラクターは好きだけれど、Type 4のような低域の暴れや、Type 8の鋭すぎる金属音はどうしても避けたい、というモダンなポップスやエレクトロニカのボーカル処理などにおいて、Type 9は「最も使いやすい、上品なスプリング」として魔法のように機能してくれます。

[!NOTE] コンボアンプ: アンプ(増幅器)とスピーカーが一つの一体型の箱(キャビネット)に収められているタイプのギターアンプ。内部にスプリング・リバーブのタンクがネジ止めされていることが多い。 タンク (Tank): スプリング・リバーブにおける、複数のバネ(スプリング)が水平に張られた金属製のユニット。この箱の中で音が物理的な振動に変換され、再び電気信号に戻される。

3. Twangström最大の武器「モジュレーション・マトリクス」

スプリング・タンクの響き自体が秀逸であることは前提として、u-heという変態的(良い意味で)なシンセ・メーカーがこのTwangströmに仕掛けた最大の魔法。それが、下半分に画面を占拠する強大な「モジュレーション・マトリクス」です。

3.1 リバーブがシンセになる?LFOとエンベロープの活用

通常のリバーブ・プラグインは、入力された音を響かせて終わる単なる「箱」です。しかしTwangströmには、完全なシンセサイザー顔負けの「LFO」と、4つのモードを備えた「エンベロープ・セクション」が搭載されています。 この内蔵のLFO(低周波オシレーター)は、DAWのBPM(テンポ)に正確に同期させることができ、その波形(サイン波、ノコギリ波、スクエア波など8種類)を使って、Twangströmのあらゆるパラメータを揺らすことができます。

たとえば、後述するフィルターの周波数(カットオフ)にLFOをアサインすれば、リバーブの残響音が定期的に「ウワウワ」と開閉する、強力なワウ・ペダルを通したようなサイケデリックな効果を生み出せます。あるいは、スプリングの「ディケイ(減衰時間)」自体を揺らすことで、空間が広がったり狭まったりを繰り返す、現実世界では絶対にあり得ないシュールなサウンドデザインが可能です。

3.2 エンベロープ・フォロワーを使った「ダッキング・リバーブ」の作り方

Twangströmのエンベロープ・セクションには、AD(Attack/Decay)、AR(Attack/Release)、Cyclic(循環)といったモードに加えて、入力されたオーディオ信号の音量変化(波形)をそのままパラメーターの変化量として抽出する「エンベロープ・フォロワー(Env Follower)」モードが用意されています。

これを利用すれば、EDMやモダンなポップスで多用される「ダッキング(サイドチェーン)」効果を、外部のコンプレッサーを一切使わずにTwangström単体で完結させることができます。 ボーカルやシンセ・リードのトラックにインサートし、エンベロープ・フォロワーをリバーブの「Mix(音の実体と残響の混ざり具合)」に対してマイナス方向にモジュレート(割り当て)します。すると、「ボーカルが歌っている最中はリバーブがスッと後ろに下がり(原音を邪魔しない)、歌い終わった瞬間に残響音がフワッと湧き上がってくる」という、極めてプロフェッショナルなミックス・テクニックがたった数秒で完成するのです。

[!NOTE] モジュレーション・マトリクス (Modulation Matrix): シンセサイザーなどで、音を変化させるための信号(LFOやエンベロープ)を、制御したいパラメータ(音量や周波数など)へ自由に「パッチケーブルを繋ぐように」割り当てる機能のこと。 LFO (Low Frequency Oscillator): 人間の耳には聞こえないような非常に低い周波数を持った波形発生器。この波形で他のパラメーターを周期的に揺らす(音を揺するとビブラートになるなど)ために用いる。 エンベロープ・フォロワー (Envelope Follower): 入力されたオーディオ信号の「音量の輪郭(エンベロープ)」を追従・抽出し、それを別のパラメーターを動かすための信号として出力する機能。


4. サウンドメイクを極める強力なTone&ドライブセクション

Twangströmは単にバネの振動をシミュレートするだけでなく、その振動を増幅する「前後の電子回路」をもパーフェクトに再現し、さらに拡張しています。

4.1 激しいサチュレーションで「ローファイ感」を演出

ビンテージのスプリング・リバーブを語る上で欠かせないのが、信号が回路を通る際に生じる「歪み(サチュレーション)」です。 TwangströmのInput Drive部では、単に音量を上げるだけでなく、入力信号に強烈な非線形の歪みを加えることができます。クリーンなギターサウンドにこれをかけると、あたかも真空管のプリアンプを通過したようなウォームで倍音豊かな響きが付加され、さらに深くかけると、音がバリバリに割れるディストーション・ペダルのような使い方も可能です。 ローファイ・ヒップホップ(Lofi Hip Hop)の荒れたビートや、汚れたシンセ・ベースを作りたいときに、このDriveを積極的に突っ込むことで、デジタル録音特有の「冷たさ」を一瞬で粉砕することができます。

4.2 プリアンプとM/S(Mid/Side)プロセッシングによる空間制御

残響を広げるための「Width」ノブも搭載されていますが、TwangströmのWidthコントロールは単なるステレオ拡張ではありません。完全なM/S(Mid/Side)プロセッシングに対応しており、モノラル入力の信号を超ワイドなステレオのリバーブに広げることはもちろん、逆にステレオ素材の「センターだけ」にスプリング・リバーブをかけ、左右はドライなまま残す、といったマスタリングに近い高度な空間制御が可能です。 これにより、スプリング特有の金属音がミックス全体を濁らせてしまうのを防ぎつつ、必要な場所(センターのボーカルやスネア)にだけその旨味を追加する、といったスマートな使い方が可能になります。

4.3 自由自在に変化するマルチモード・フィルター

さらに驚くべきは、このプラグインに内蔵されているモーフィング・フィルターです。 単なるEQのトレブル・ベースではなく、Low Pass(LP)〜Band Pass/Notch〜High Pass(HP)へと、つまみを回すだけでシームレスに機能が変化(モーフィング)する12dB/octのレゾナント・フィルターが搭載されています。 このフィルターはルーティングを切り替えることができ、スプリング・タンクの「前(Pre)」にかけるか、「後(Post)」にかけるかを選択できます。低域の濁りを入れる前にカットするも良し、モジュレーション・マトリクスを使ってLPのカットオフを激しく動かし、残響音全体を電子的なワウ・シンセのように変貌させるも良し。このフィルターこそが、Twangströmを「サウンドデザインの究極の飛び道具」へと押し上げている影の主役なのです。

[!NOTE] サチュレーション (Saturation): アナログ機器の回路に過大な信号が入力されたときに発生する、心地よい「飽和」や「歪み」。音の輪郭を太くし、前に押し出す効果がある。 M/S プロセッシング (Mid/Side Processing): ステレオ信号をL/R(左右)ではなく、「センター(Mid)」と「左右の広がり(Side)」に分離して個別にエフェクト処理を行う高度なミキシング手法。 モーフィング・フィルター (Morphing Filter): 高域を削る(Low Pass)や低域を削る(High Pass)といったフィルターの種類を、スイッチでの切り替えではなく、ノブの連続的な動きによって滑らかに変化させる特殊な機能。


5. 実戦投入!Twangströmの具体的なミックス・テクニック

ここまでの機能解説を踏まえ、実際の楽曲制作においてTwangströmをどのように使えば最高の結果が得られるのか、具体的なシチュエーション別のテクニックをご紹介します。

5.1 エレキギターと相性抜群の「サーフロック・セッティング」

1960年代のサーフロックやガレージロックで聴かれる、あの「ピチャピチャ」とした水滴のような分厚いリバーブ。これを再現するなら、迷わずType 4のタンクを選択します。

  • Decay(減衰): やや長め(3〜4秒)に設定。
  • Drive: ギターアンプ特有の歪みをシミュレートするため、入力Driveを少し高め(+3dB〜+5dB)に設定し、音を程よく飽和させます。
  • Tone: 高域成分が耳に痛くならないよう、Toneつまみを少し「Dark」側に傾け、低域の暖かさを強調します。 このセッティングでギターをストロークすれば、アンプのキャビネットそのものが激しく共振しているかのような、太くマッシブな波乗りのサウンドが一瞬で手に入ります。

5.2 電子音楽(ダブ/テクノ)における過激なサウンドデザイン

ダブやレゲエ、あるいはインダストリアル・テクノにおいて、スプリング・リバーブは「空間を作るため」ではなく、「狂気とノイズを生み出すため」に使われます。

  • Tank: 金属音が最も強調されるType 8を選択。
  • Modulation: モジュレーション・マトリクスを開き、LFO 1を「フィルターのカットオフ」と「ディケイ」の両方にアサイン(割り当て)します。LFOのスピードはBPMに同期(Sync)させ、1/4または1/8に設定。
  • Filter: モーフィング・フィルターをBand Pass(BP)の中間あたりに設定し、レゾナンス(Q)を高くして「キュイーン」という発振音寸前の状態を作ります。 この状態でシンセ・コード単音(ダブ・コード)を入力すると、リバーブの残響音がLFOに合わせて「シュワシュワ」と開閉しながら、うねりを上げて空間に消えていく、完全に異次元のダブ・エフェクトが完成します。

5.3 バーチャルなスプリングを「蹴り飛ばす(Twang)」裏技

Twangströmの最もユニークで狂気じみた機能が、タイトルにもなっている「Twang(ツワング)」機能です。 かつてのギタリストたちは、ライブ中にギターアンプを「蹴っ飛ばす(あるいは叩く)」ことで、内部のスプリング・タンクを物理的に激突させ、「ガッシャーン!」という雷のようなノイズを意図的に発生させていました。 Twangströmは、この「アンプを蹴り飛ばす行为」をパラメーターとして完全にシミュレートしています! 「Twang」ボタンを押す(あるいはMIDIコントローラーでトリガーする)と、バーチャルなバネが激しく揺らされてあのクラッシュ・ノイズが発音されます。楽曲のブレイク(無音になる瞬間)や、ドラムの大きなフィルインの瞬間にこのTwangをオートメーションでトリガーすれば、リスナーの度肝を抜く強烈なインパクトを与えることができます。

[!NOTE] サーフロック (Surf Rock): 1960年代初頭にアメリカ西海岸で流行したロックのサブジャンル。エレキギターの激しいスプリング・リバーブとトレモロが象徴的なサウンド。 ダブ (Dub): レゲエから派生した音楽ジャンル。原曲のボーカルを抜き、ベースとドラムを強調しつつ、ディレイや深いリバーブを過激にかけるミキシング手法そのものを指すことが多い。 Twang (ツワング): 弦を弾いた時の「ビーン」「ビヨーン」という音を表す擬音語。ここではスプリング・リバーブのバネが激しく共振・衝突した際の金属的パルス音を指す。


6. 総評:Twangströmはどんなクリエイターにおすすめか?

今回、u-he Twangströmを徹底的に検証して分かったことは、これが「綺麗な残響を足したい」という消極的な理由で使うエフェクトではないということです。

6.1 音作りの限界を超えたいエンジニアへの最適解

Twangströmは、音に「汚れ」「金属的カオス」「有機的な揺らぎ」を加えるための、最強の「着色ツール」です。 したがって、以下のようなクリエイターには手放せない相棒となるでしょう。

  • デジタル録音(DTM)の綺麗すぎる音色に、圧倒的なキャラ立ちと「アナログの危うさ」を加えたいクリエイター。
  • ダブ、IDM、テクノなどで、空間そのものをモジュレーションしてウネらせる「サウンド・デザイナー」。
  • 「アンプを蹴り飛ばした音」を楽曲のフックとして使いたい、ロックな魂を持ったプロデューサー。

一方で、「オーケストラのホールの響きを再現したい」「ボーカルに自然な奥行きを出したい」という目的であれば、他のIRリバーブやアルゴリズム・リバーブを選択するべきです。 Twangströmの真価は、計算し尽くされた物理モデリングによって「計算外のカオス」を生み出せる点にあります。

単なる「エフェクター」という枠を超え、あなたのDAWの中にインストールされる「もう一つの狂暴な楽器」。それがTwangströmです。もしあなたがサウンドメイクの壁をぶち破り、自分だけの強烈なシグネチャー・サウンドを手に入れたいと願っているなら、ぜひこの「バーチャルなバネ」を限界まで弾き倒してみてください。


7. 補足 Q&A:Twangströmをさらに深く知るために

記事の最後に、読者の皆様から寄せられそうなTwangströmに関するマニアックな疑問にお答えします。

u-heというブランドは、なぜこれほどまでに「物理的な揺らぎ」にこだわるのでしょうか?

u-he(ユーヒー)の創設者であるUrs Heckmann氏は、アナログ・シンセサイザーの持つ「不完全さ」こそが音楽に生命感を与えると信じています。デジタル世界のプログラミングは、完璧な「1」と「0」で構成されますが、現実世界の機材は温度や電流、物理的な振動によって常に揺らいでいます。 Twangströmの心臓部にある数式は、単に「バネの音のシミュレーション」をしているのではなく、「鉄の質量、張力、サスペンションの揺れ方」そのものをリアルタイムで計算しています。これにより、同じ数値を入力しても、発音のタイミングや入力信号のわずかな違いによって、出力される残響の波形が毎回ミクロなレベルで変化するのです。これこそが、u-heのプラグインを通した音が「人間味がある」と言われる最大の理由です。

初心者がTwangströmを購入した場合、まず何から手をつければ良いですか?

モジュレーション・マトリクスや物理モデリングのパラメーターは確かに複雑に見えるかもしれませんが、以下の手順で触ってみることを推奨します。

  1. プリセットに頼る: u-he製品は、世界一流のサウンドデザイナーが作成した強力なプリセットが大量に収録されています。「Guitars」「Special FX」「Drums」などのカテゴリから、自分の目的に近いものを選んでください。
  2. Driveノブを回す: InputのDriveを極端に上げ下げしてみてください。このコンポーネントが単なる空間エフェクトではなく、強烈なサチュレーター(歪みエフェクト)であることがすぐに理解できるはずです。
  3. Twangボタンを押す: 音楽が鳴っている最中に「Twang」をマウスクリックしてみてください。このプラグインがどれだけ「クレイジー」な設計思想を持っているか、一撃で体感できます。

DSP負荷(CPU消費)は高いですか?

物理(フィジカル)モデリングは、サンプリング系のIRリバーブと比較すると、リアルタイムでの演算量が大きいため、お使いのパソコンのCPUにある程度の負荷をかけます。しかし、u-heは長年の最適化技術により、現代の標準的なDTM用パソコンであれば、複数トラックにインサートしても全く問題なく動作するレベルまで軽量化を実現しています。さらに、設定画面の設定で「エコモード(Eco Mode)」に変更することも可能なので、万が一CPUがオーバーヘッドを起こしそうな場合でも安心です。

[!NOTE] DSP (Digital Signal Processor) 負荷: プラグインがパソコンのCPU(または専用の演算チップ)にかけている処理の重さのこと。モデリング系プラグインはリアルタイム計算を行うため、IR系に比べて負荷が高くなる傾向がある。 オーバーヘッド: システムが処理の限界に近づき、音声のノイズ(プチプチ音)などが発生する状態。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。Twangströmという暴れ馬を乗りこなし、あなたの挑戦的な音楽制作ライフがさらに豊かで刺激的なものになることを心から願っています!

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この記事を書いた人

櫻井徳右衛門のアバター 櫻井徳右衛門 音楽プロデューサー・ミュージシャン

希少種ギターメタラーDTMer
VSTレビュー公開記事・触ったDTMプラグインは1,000個以上を超える。
ギタリスト・作曲家でもあり、音楽リスナーであることから聞くのも好きでイヤホン・ヘッドホンも集めはじめる。

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