ヴィンテージEQのプラグインって、正直どれも似たような説明文に見えませんか……?
「実機を丁寧にモデリング」「アナログの質感を再現」、そんな言葉はもう何百回と見てきた身としては、正直かなり慣れっこです。
そこに来て今回扱うEvertoneのMORGシリーズは、輪をかけてややこしい。Vintage 66・Vintage 73・Vintage 81・Vintage 84、さらにMORG-81 EQとMORG-81 EQP3……名前も型番も似ていて、公式ページを1つずつ見比べるだけでもひと苦労です。「結局どれを買えばいいの?」という声が出るのも無理はありません。
今回は6機種を横並びで比較しながら、それぞれの違いと選び方を整理していきます。
目次
Evertone MORGとは何か
Evertone MORGは、日本発のプラグインブランド「Evertone Project」(公式サイト:evertone.jp)が手がけるヴィンテージEQプラグインのシリーズです。設計を担当しているのは門賀喜則氏。25年以上にわたってヴィンテージ機材を選定・整備してきたエンジニアであり、スタジオオーナーでもある人物です
レビューしたEvertone Compressor と同じブランドの製品ということになります。
一般的なヴィンテージEQプラグインは、「〇〇という型式のEQ」を1つの理想像としてモデリングします。
ところがMORGシリーズが再現しているのは、型式ではなく現在も商用スタジオで実際に稼働している、個別のハードウェアユニット1台1台 です。
同じ型番の実機でも、経年変化や修理歴によって個体ごとに微妙な音の違いが出るものですが、MORGはその個体差を均さず、あえてそのまま再現しているのが最大の特徴です。
実機とのヌルデプス(差分の少なさを示す指標)は−28.6〜−33.5dB程度とされていて、この手のキャプチャ系プラグインとしてはかなり精度が高い部類に入ります。
「理想化されたモデル」ではなく「今まさに現場で鳴っている、その1台」を写し取る…… という発想がユニークで、これがMORGシリーズを選ぶ理由にもつながってきます。
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MORG Vintage・MORG-81、6機種の違い(機種比較)
Evertone MORGシリーズは大きく分けて「MORG Vintageライン(66・73・81・84)」と「MORG-81ライン(EQ・EQP3)」の2系統で展開されています。
ここがややこしいポイントで、Vintage 81とMORG-81 EQ/EQP3は名前に同じ「81」が入っていますが、系統としては別物です。Vintage 81は4バンド構成の本格派EQ、MORG-81 EQ/EQP3はよりコンパクトで価格も抑えられたシンプル版という位置づけになります。
まずは6機種を表で比較してみます(価格は2026年9月17日時点、Plugin Boutiqueでのセール価格)。
音の傾向は同じで、大きな違いとしては、EQの扱える範囲が機種ごとに差がある点。
製品名 系統 モデリング対象 バンド構成 特徴的な機能 価格(通常→セール) MORG Vintage 66 Vintage 1970年代ブリティッシュコンソール 3バンド+HPF(10kHz固定) ミッドバンド5ポジション選択 ¥13,200 →¥7,920 MORG Vintage 73 Vintage 1970年代ブリティッシュコンソール 3バンド+HPF(12kHz固定) ミッドバンド6ポジション選択 ¥13,200 →¥7,920 MORG Vintage 81 Vintage 1970年代ブリティッシュコンソール/プリアンプ 4バンド+H.P./L.P. ミッドHiQトグル、LF/HFはシェルフ⇄ピーク切替 ¥13,200 →¥7,920 MORG Vintage 84 Vintage 1970年代ブリティッシュコンソール 3バンド+HPF/LPF(3ポジション) ミッドHiQ切り替え ¥13,200 →¥7,920 MORG-81 EQ MORG-81 81-styleアンプ由来のEQ 3バンド+HPF 66/73系の操作感・周波数配置を踏襲 ¥8,800 →¥5,280 MORG-81 EQP3 MORG-81 パッシブEQ(MORG×Ambience Sound Design共同開発) パッシブ型 同一低域帯域を同時ブースト/カット可能 ¥8,800 →¥5,280
実機
2026年9月18日時点でMORGの実機が入手できるのは以下。
MORG-81
MORG-7281
MORG-72
MORG-81EQ
MORG-81EQP3
実機はそれぞれ40万円前後の価格帯の機材です。
各機種の特徴
MORG VintageはNEVE系のEQで、それぞれ数値がモデルにした型番になっています。
単純なモデリングではなく、実際に商業スタジオで現場投入されている機種の音が元になっているので、個体差もそのままプラグインへ反映されています。
Vintageシリーズは自然なEQのかかり方が最高です! またDriveノブが付いており、歪み成分を調整することができます!
共通スイッチ
右端に寄っているスイッチは6機種共通です。
◯PH 位相を反転します。◯EQ EQ セクションのオン/オフ。オフでもプリアンプは通る ◯QT プリアンプの演算精度。Full と Lite 。Lite は負荷の軽い簡略版です。切替時は一瞬フェードします。 基本はONで。◯#1/#2 実機2台の 切り替え。音の違う同機種のキャプチャを切り替えできます。◯Drive 歪みの量を調整
MORG-81 EQP3
PAIRとSATのボタン
◯PAIR L に #1、R に #2 を割り当てます。実機2台をステレオで立てた状態。◯SAT 実機を深く歪ませた状態 で別に測ったモデルに切り替えます
MORG Vintage 66
MORG Vintage 66
1970s British Console 3バンドEQ + H.P.。HF は 10k 固定、MID は 5ポジション
MORG Vintage 66
1970年代のブリティッシュコンソールを実測した3バンドEQ。ハイパスフィルターは10kHz固定で、ミッドバンドは5ポジションから選ぶスタイルです。可変の自由度が絞られている分、迷わず狙った帯域に当てにいけるのが特徴で、ミックスの土台を組む段階で「崩さずに質感を足す」使い方に向いていそうな印象です。
MORG Vintage 66の製品ページ
MORG Vintage 73
MORG Vintage 73
Neve系モデルで代表的な1073の音がベースになっています。
1970s British Console 3バンドEQ + H.P.。HF は 12k 固定、MID は 6ポジション
MORG Vintage 73
Vintage 66と同じくブリティッシュコンソール由来の3バンドEQですが、ハイパスフィルターは12kHz固定、ミッドバンドは6ポジションとやや選択肢が広がっています。
Vintage 66よりは音像がハッキリしますが、Vintage 66のまろやかさも捨てがたい。
1ノブでガラッと質感を作れるタイプのEQなので、ボーカルやドラムバスなど、ミックスの主役級トラックに使うイメージがしっくりきます。
MORG Vintage 81 (☆操作幅を求める人にイチオシ)
MORG Vintage 81
1970s British Console 4バンドEQ + H.P./L.P.。ミッドは HiQ 切替、LF・HF はシェルフ/ピーク切替 Vintageシリーズで音作りの幅が広いです。
MORG Vintage 81
4機種の中でもっとも高機能なのがVintage 81です。4バンド+ハイパス/ローパスフィルターという構成に加えて、ミッドバンドにHiQトグル、LF/HFはシェルフとピークを切り替えられます。1台でここまで作り込めるチャンネルストリップ的な使い方ができるので、Vintage系の中で最初の1本に選ぶなら、まずこれを検討したいところです。
MORG Vintage 81の製品ページ
MORG Vintage 84
MORG Vintage 84
1970s British Console 3バンドEQ + H.P./L.P.。HF は3ポジション、MID は hi-q 切替つき
MORG Vintage 84
3バンド構成に、ハイパス/ローパスフィルターが3ポジションで切り替えられるのがVintage 84。ミッドにはHiQ切り替えも搭載されていて、Vintage 66・73より一段階柔軟に音作りできるポジションです。「もう少し追い込みたいけど81ほどの機能はいらない」という、ちょうど中間の選択肢として考えられます。
Hi-qのスイッチはバンドのシェルフ⇔ピーク の切り替えスイッチ。MID帯域の音のバリエーションが作れる。
hi-q ON:山が滑らかになる
MORG Vintage 84の製品ページ
MORG-81 EQ(☆パワフルさを求める人にイチオシ)
MORG-81 EQ
MORG Vintage 81よりもシンプルかつ クリアなサウンド!で使いやすい
81 スタイルのアンプ で駆動しつつ、66 / 73 系の操作感と周波数体系 を持つ 3 バンド EQ + H.P.
81スタイルのスタンダードモデル。
3バンド+ハイパスフィルター という構成で、66/73ラインの操作感・周波数配置を踏襲している。
Driveの歪み幅は広く、Vintage4機種よりもキツめに歪ませられます。
デフォルト時の状態: ピンク vintage81 / 赤:81EQ
MORG Vintage81と MORG 81EQとの違い
MORG 81EQ
MORG Vintage 81
MORG 81EQ の利点としては、とてもシンプル。 MID,LFの帯域切り替えとGainノブが別れていて操作がやりやすいです。
音質面では81EQ の方がドンシャリ傾向でパワフル。 細かくイコライジングしたい場合はVintage81 の方がMIDが2つあり、HFの帯域も選べるので操作幅が広いです。 MORG 81EQのHFは10K固定のため、シンプルな作業フローでまとめたい人に向いています。
価格も抑えられているので、Vintage系より気軽にMORGサウンドを試したい人向けと言えそうです。
MORG-81 EQの製品ページ
MORG-81 EQP3 (MORG-81EQP3 Preamp EQ)
MORG-81 EQP3
同時ブースト/カット方式 のパッシブEQ。 低域は同じ周波数で持ち上げと下げを同時にかけられる のがサウンドの要
MORG-81 EQP3
MORG×Ambience Sound Design共同開発のパッシブEQです。もっとも特徴的なのが、同一の低域帯域を同時にブースト/カットできる設計で、Pultec系のパッシブEQに近い挙動をします。
低域をふくらませつつ余分な部分を削る……という、あの独特の「太くなるのに締まる」感覚を求める人には気になる存在です。
MORG-81 EQP3の製品ページ
選び方のポイント
最初の1本ならどれか。 Vintage系から入るなら、機能が一番充実しているVintage 81。
1台であらゆる場面に対応できる汎用性があります。MORG-81系から入るなら、まずEQで基本の質感を掴んでから、必要に応じてEQP3のパッシブ的な挙動を追加する流れが分かりやすいはずです。
予算別に選ぶなら。 ¥5,280前後で試したいならMORG-81 EQ・EQP3、 ¥7,920でもう少し作り込みたいならVintage系というのが、セール価格ベースでの目安になります。6機種を一気に揃えるより、まずは自分がよく触るトラック(ボーカルなのかドラムバスなのか)に近い用途の1本から試すのが失敗しない選び方だと思います。
Vintage系とMORG-81系、どちらから入るべきか。 音作りをガッツリ追い込みたい人はVintage系、まずは手頃にMORGサウンドの傾向を掴みたい人はMORG-81系……というのが僕なりの整理です。特にVintage 81とMORG-81 EQ/EQP3は名前が紛らわしいので、「Vintage」の文字が付いているかどうかで見分けるのが確実です。
MORG Vintage 66 デフォルト設定
MORG Vintage 81 デフォルト設定
MORG Vintage 81-EQ デフォルト設定
MORG Vintage 73 デフォルト設定
MORG Vintage 84 デフォルト設定
MORG Vintage 81-EQP デフォルト設定
使ってみて感じたこと
6機種を並べて触ってみると、いわゆる「ヴィンテージEQあるある」の綺麗にまとまった質感とは少し違う手触りがある、という印象を受けました。個体差をそのまま残しているという設計思想の通り、機種ごとに癖の出方がバラバラで、一言で「MORGの音」とまとめきれない面白さがあります。
Vintage66,Vintage73は扱えるノブが少ないので、作業効率が良いのとまとまりやすい印象。
特にVintage 81は機能量が多い分、1台で用途を選ばず使える懐の深さがあると感じました。一方でMORG-81 EQP3は、パッシブEQ特有の「ブーストしているのにうるさくならない」感覚が出やすく、低域の扱いに悩んでいる人には刺さりそうな作りです。
──ただし6機種すべてを一気に揃える必要はなく、まずは自分の制作スタイルに近い1〜2本から試すので十分だと思います。
メリット・デメリット
メリット
個体差をそのまま再現しているので、他社のヴィンテージEQエミュレーションとは違う「生っぽさ」がある
Vintage系・MORG-81系と価格帯が分かれているので、予算に応じて選びやすい
セール時なら1本¥5,280〜¥7,920とヴィンテージ系EQとしては手を出しやすい価格
デメリット
6機種も名前が似ていて、初見だとどれがどれか把握しづらい
NEVE系のインスパイアモデルは、外ノブと内ノブが重なっているので、外ノブを回すときにマウスのカーソル幅のコントロールが大変です
実機そのままなUIは良いのですが、PC画面上だと慣れるまでちょっと大変。
またGainノブの0の位置が独特なので注意してください。
個人的にはメモリの数値の文字の大きさがもう少し大きいと見やすくて良かったと思います。
どんな人におすすめ?
ヴィンテージEQプラグインの「均された綺麗さ」に少し物足りなさを感じている人
個体差込みのリアルな質感を求めているエンジニア・作曲家
まずは手頃な価格でMORGサウンドの傾向を試したい人(MORG-81系から)
1台で多機能に音作りしたい人(Vintage 81)
セール情報
2026年9月17日時点、Evertone MORGシリーズ6機種は全機種40%オフのセール中です。セール期限は2026年9月30日までとなっているので、気になっている機種があれば早めにチェックしておくのがおすすめです。
MORG Vintage 66:¥13,200 → ¥7,920(製品ページ )
MORG Vintage 73:¥13,200 → ¥7,920(製品ページ )
MORG Vintage 81:¥13,200 → ¥7,920(製品ページ )
MORG Vintage 84:¥13,200 → ¥7,920(製品ページ )
MORG-81 EQ:¥8,800 → ¥5,280(製品ページ )
MORG-81 EQP3:¥8,800 → ¥5,280(製品ページ )
セール期限を過ぎると通常価格に戻る可能性があるので、購入を検討している場合は期限内に判断しておくと安心です。
FAQ
Q. Evertone MORGは他のヴィンテージEQプラグインと何が違うのですか?
A. 多くのヴィンテージEQプラグインは「型式」を1つの理想像としてモデリングしますが、Evertone MORGは現在も商用スタジオで稼働している個別のハードウェアユニット1台1台を実測し、個体差をそのまま再現しています。型式単位ではなく個体単位で作られている点が最大の違いです。
Q. 記事中に出てくる「ヌルデプス」とは何を意味していますか?
A. プラグインの出力と実機ハードウェアの出力を重ねたときにどれだけ差が少ないかを示す指標です。数値が低い(マイナス側に大きい)ほど実機との誤差が少なく、精度の高いキャプチャであることを表します。MORGシリーズは−28.6〜−33.5dB程度とされていて、この手のプラグインとしてはかなり精度が高い部類に入ります。
Q. Vintage 81とMORG-81 EQ・EQP3は同じシリーズの製品ですか?
A. どちらもEvertone MORGブランドの製品ですが、系統としては別物です。Vintage 81は4バンド+H.P./L.P.フィルターを備えた本格派のVintageラインで、MORG-81 EQ・EQP3はよりシンプルで価格も抑えられたMORG-81ラインに属します。「81」という数字が共通しているため紛らわしいですが、「Vintage」の文字が付いているかどうかで見分けられます。
Q. MORG-81 EQP3の「パッシブEQ」とはどういう仕組みですか?
A. 一般的なアクティブ型EQとは異なり、同一の帯域を同時にブースト・カットできる回路設計を持つEQです。Pultec系のパッシブEQに近い挙動で、低域をふくらませながら余分な成分を削れるため、ブーストしても暴れにくい質感を作りやすいのが特徴です。
Q. MORGシリーズはバンドルでまとめて買うのと単体で買うの、どちらがお得ですか?
A. 現行のEvertone Bundle V2にはVintage 81とEQP3が含まれていますが、Vintage 66/73/84とMORG-81 EQが含まれるバンドルがあるかどうかは要確認です。欲しい機種がバンドル対象に含まれているかは公式サイトやPlugin Boutiqueで最新の構成を確認したうえで、単体購入とどちらが総額として安いか比較するのが確実です。
まとめ
Evertone MORGシリーズは、Vintage 66・73・81・84とMORG-81 EQ・EQP3という6機種展開で、名前だけ見ると非常に紛らわしいシリーズです。ただし整理してしまえば、Vintage系は本格的に音を作り込みたい人向け、MORG-81系は手頃にMORGサウンドを試したい人向け、という軸で分かれていることが分かります。
個体差をそのまま残すという設計思想は、他のヴィンテージEQプラグインではあまり見かけないアプローチです。セール期間中の今なら価格的にも試しやすいので、まずは自分の制作スタイルに近い1本から触ってみるのがおすすめです。EQプラグイン全般のレビューはEQカテゴリ にまとめているので、他の選択肢と比較したい人はあわせてチェックしてみてください。
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