DAWにお金をかけたくないけど、機能は妥協したくない……。そう思ったことはないでしょうか。
無料DAWって結局は「お試し版」みたいなもので、本格的に曲を作るなら結局は有料DAWに乗り換える羽目になる。そんなイメージを持っている人も多いはずです。あるいは、UAD系のプラグインが気になっているけど、Apolloインターフェースは高くて手が出ない、という人もいるかもしれません。
そんな両方の悩みに刺さるのが、Universal Audioが提供するDAW「LUNA」です。しかも2026年9月15日、このLUNAが「LUNA 3.0」として大きくアップデートされました。有料版の名称変更、無料版の機能強化、どちらも見逃せない内容になっています。
目次
Universal Audio LUNAとは
LUNAはUniversal Audioが開発するDAWソフトです。もともとはApolloオーディオインターフェースを持っているユーザー向けの専用DAWという位置づけで、Apolloがなければまともに使えないソフトでした。UADプラグインの多くが「UAD-2」というDSPチップを積んだハードウェアが無いと動かない仕様だったため、LUNA自体もハードウェア前提の設計だったわけです。
LUNA Digital Audio Workstation – Universal Audio
ところがここ数年で状況が変わりました。UADプラグインのネイティブ版(CPUだけで動くバージョン)が登場し、Mac・Windowsへ直接インストールして使えるようになったのです。この流れはsakutoku.jpのUADプラグインセール【2026年9月最新】おすすめは?迷ったらコレ! でも触れていますが、「かつてはUniversal Audioのハードが無いと使えなかった」プラグインが、今では誰でも気軽に試せる存在になっています。LUNAがハードウェア不要になった経緯そのものは、以前【無料DAW】Universal Audio LUNA 2.0 update でも取り上げているので、そちらもあわせてチェックしてみてください。
LUNA自体もこの流れに乗り、Apolloなどの自社ハードウェアを持っていなくても、任意のオーディオインターフェースで動作するDAWになりました。macOS・Windowsの両方に対応していて、クレジットカード登録すら不要。つまり「UADの世界を覗いてみたいけどハードは買いたくない」という人にとって、今のLUNAはかなり間口の広い入り口になっているということです。
LUNA 3.0で何が変わったのか(従来のLUNAとの違い)
ここが今回の本題のひとつです。2026年9月15日、Universal Audioは「LUNA 3.0」を発表しました。公式ブログやMusicTech、Gearnewsといった海外メディアでも報じられているので、DTM界隈ではそれなりに話題になった発表だと思います。
一番わかりやすい変化は、有料版の名称変更 です。これまで「LUNA Pro」と呼ばれていた有料版が、LUNA 3.0のタイミングで「LUNA Studio」に改名されました。単なる名前の変更だけでなく、機能面でもかなり手が加えられていて、無料版のLUNA Freeとの二層構造が明確になった印象です。
さらに新しく「UAD Spark Studio」というサブスクリプションサービスも登場しました。これはLUNA StudioとUADネイティブプラグインライブラリ全体をまとめて使えるプランで、買い切りが苦手な人向けの選択肢として用意された形になります。
機能面で目立つのは、自動化・AI寄りの機能がかなり強化された ことです。具体的には以下のような機能が新規追加されました。
LUNA Play ……レベル設定やUADプリセットの提案を自動でやってくれる簡易録音ツール。ボイスメモ感覚でアイデアを録れる機能で、「とりあえず録っておく」というハードルをかなり下げてくれます
ステムセパレーション ……既存のオーディオをボーカル・ドラム・ベースなどのパートに分離できる機能。Free版は4トラック、Studio版は6トラックまで対応
再設計されたピアノロール ……スケール対応になり、打ち込み時に音を外しにくくなった
Adaptive Grid・Clip Gain Automation・Record FX・Strip Silence・Folder Tracks・Click Track Automation ……作業効率を上げる細かい機能が一気に追加
コード・キー・拍子ルーラー ……曲のコード進行やキーを可視化できる
そしてStudio版限定の目玉として、Audio to MIDI変換 、Moisesと連携した歌詞自動転記 、コード抽出 といった、いわゆる「AIっぽい」解析機能が加わっています。耳コピや歌詞起こしの手間を減らしたい人にとっては、かなり実用的な追加だと感じます。
「DAWのアップデート」というと地味な印象を持つ人もいるかもしれませんが、LUNA 3.0に関しては単なる不具合修正やUIの微調整ではなく、無料版・有料版どちらも実質的な機能追加が入っている点が特徴的です。
LUNA Free と LUNA Studio の違い(比較表)
LUNA Studio
無料版のLUNA Freeと、有料版のLUNA Studio。どこまでが無料でどこからが有料なのか、混乱しやすいので表にまとめておきます。
項目 LUNA Free LUNA Studio 対応OS macOS / Windows macOS / Windows ハードウェア要件 不要(任意のインターフェースで動作) 不要(任意のインターフェースで動作) トラック数 無制限 無制限 収録プラグイン 8種(UAD Explore Freeバンドル) 30種のUADプラグイン・インストゥルメント ステムセパレーション 4トラック 6トラック Audio to MIDI変換 非対応 対応 歌詞自動転記(Moises連携) 非対応 対応 コード抽出(Moises連携) 非対応 対応 テープ・コンソールエクステンション 非搭載 API・Studer・Ampexのエミュレーションを搭載 ARAプラグイン 非対応 6種対応 価格 無料(クレジットカード登録不要) $199(買い切り)/UAD Spark Studio経由で月額・年額プランあり
こうして並べると、LUNA Free と LUNA Studio の違いは「解析系のスマート機能」と「テープ・コンソールのエミュレーション」に集約されているのがわかります。逆に言えば、録音・打ち込み・ミックスといった基本の制作フローは無料版でも一通りこなせる設計になっているということです。
無料DAWとしてのLUNA Freeのポテンシャル
VIDEO
ここが個人的に一番驚いたポイントです。LUNA Freeは「無料版だから機能が絞られている」というレベルではなく、普通に一本のDAWとして完結できる内容になっています。
まず収録プラグインが豪華です。UA 610 Tube Preamp & EQ Collection、UA 1176 Classic FET Compressor、Teletronix LA-2A Tube Compressor、Vibe Analog Machines Essentials、Pure Plate Reverb、UAD Showtime ’64 Tube Amp、Century Tube Channel Strip、PolyMAX Synthの8種類が最初から使えます。1176やLA-2Aといった名前は、ミックスの経験がある人なら一度は聞いたことがあるはずの定番コンプです。これが無料で付いてくるのは正直かなり太っ腹だと思います。
加えて、Oxide Tapeというテープシミュレーションが全トラックで使える点、Shapeというインストゥルメント、ARPアルペジエイターも付属しています。プラグインだけでなく音作りの引き出しがそれなりに揃っているのが好印象です。
そして見逃せないのが、VST3・AUのサードパーティプラグインもホストできるという点。つまり、すでに手持ちのプラグインがある人は、LUNA Freeに乗り換えても今までの資産をそのまま使い続けられます。無料DAWにありがちな「独自フォーマットの縛り」がないのは、実用面でかなり大きい違いです。
トラック数無制限・透かしなし・試用期間なし・クレジットカード登録不要という条件も地味に効いてきます。他の無料DAWだと「トラック数16まで」「書き出し時に透かしが入る」「30日で使えなくなる」といった制限があるケースは珍しくありません。GarageBandは手軽さでは優秀ですがMac専用で機能もシンプル寄り、Cakewalkは無料でも高機能ですがUIやワークフローがやや古典的という声もあります。それらと比べると、LUNA Freeは「制限のない無料DAW」に「本格的なアナログモデリングプラグイン」が最初から同梱されている点で、独自のポジションを確立していると感じます。
もちろん、Audio to MIDIや歌詞転記のようなスマート機能、テープ・コンソールのエクステンションはStudio版限定です。ただ「まず無料で一本曲を作り切れるかどうか」という基準で見れば、LUNA Freeはかなり高いラインをクリアしているという印象です。
LUNA Studioへのアップグレードで何が変わるか
無料版だけでも十分戦えるLUNA Freeですが、LUNA Studioにアップグレードすると得られるものも決して小粒ではありません。価格は$199の買い切りです。
一番の目玉はLUNA Extensionsでしょう。API・Studer・Ampexといったブランドのテープ・コンソールエミュレーションが組み込まれていて、ミックス全体を通すだけで質感が変わってくるタイプの拡張です。個別にテープシミュレーターやコンソールストリップを買い揃えることを考えると、DAWにまとめて内蔵されているのはコスト面でも作業面でも効率が良いと思います。
プラグイン面では30種類のUADプラグイン・インストゥルメントに加え、6種類のARAプラグインが使えるようになります。ハードウェアインサート対応も地味に嬉しいポイントで、外部の実機コンプやEQをDAW内のプラグインと同じ感覚でチェーンに組み込めます。
そしてStudio版だけのスマート機能群も強力です。Audio to MIDI変換でメロディやフレーズをMIDIデータ化できるほか、6トラックのステムセパレーション、Moises駆動の歌詞自動転記、コード抽出まで揃っています。耳コピやアレンジのたたき台作りにかかる時間をかなり圧縮できる印象です。Synthesizer V 2やTopline Vocal Tuneといったバンドル楽器も含まれていて、ボーカル制作寄りの機能も手厚くなっています。
LUNA Studio Upgrade from LUNA Pro v1 or v2 はこちら >>
感じたこと
まず操作感がApollo専用DAWだった頃のイメージとはかなり変わっているという印象です。ハードウェアが無くても違和感なく起動して、録音からミックスまで一通りの流れがスムーズにこなせます。
LUNA Playのような「とりあえず録る」機能は、アイデアを逃したくないタイプの人にはかなり刺さるはずです。レベル調整を自動でやってくれるので、機材のセッティングに気を取られず演奏や歌に集中できるのは地味にありがたいポイントだと思います。
一方で、Audio to MIDIや歌詞転記といったスマート機能は無料版では使えないため、「無料でどこまで粘れるか」を試している段階では機能の存在自体を体感しにくいかもしれません。この辺りは実際に使い込んでみないと精度感がつかみにくい部分で、あくまで機能一覧から受ける印象という前提で見てもらえればと思います。
──個人的には、UADプラグインの世界に足を踏み入れたい人がまず触るDAWとして、今のLUNA Freeはかなり良い入り口になっていると感じます。
メリット・デメリット
メリット
ハードウェア不要でmacOS・Windowsどちらでも動作する
LUNA Freeだけでもトラック数無制限・透かしなし・本格的なUADプラグイン8種が使える
VST3・AUのサードパーティプラグインもホストできるので既存の資産を活かせる
LUNA Studioにすると歌詞転記・コード抽出・Audio to MIDIなど「AIっぽい」解析機能が一気に増える
LUNA Extensionsでテープ・コンソールの質感を手軽に加えられる
デメリット
Audio to MIDIや歌詞転記などのスマート機能は無料版では使えない
30種のUADプラグインを個別に持っている場合、Studio版の価格に対する費用対効果は人によって差が出る
従来からのLUNAユーザーにとっては、名称変更(Pro→Studio)や料金体系の変化に慣れるまで多少の戸惑いがあるかもしれない
どんな人におすすめ?
UAD系のプラグインが気になっているけどApolloは高くて手が出ない人
無料DAWで妥協したくない、でも高いDAWにお金を出す決心はまだつかない人
耳コピや歌詞起こしの作業を効率化したい人(LUNA Studio向け)
テープ・コンソールの質感をまとめて手に入れたいミックス志向の人(LUNA Studio向け)
価格・入手方法
2026年9月17日時点の価格情報は以下の通りです。
LUNA Free :無料(クレジットカード登録不要、試用期間なし)
LUNA Studio :$199(買い切り)
UAD Spark Studio (LUNA Studio込みのサブスクリプション):月額$19.99、または年額$149.99
いずれもUniversal Audio公式サイトから入手できます。LUNA製品ページ 、LUNA Free製品ページ 、LUNA Studio製品ページ から詳細を確認できます。プラン変更や価格は変動する可能性があるため、購入前に公式サイトで最新情報を確認しておくのが確実です。
FAQ
Q. Apolloなどのハードウェアがなくても本当に使えますか? A. はい。LUNA Free・LUNA Studioともにハードウェア不要で、任意のオーディオインターフェースで動作します。かつてはApollo専用でしたが、現在はハードウェアの有無を問わず利用できる仕様になっています。
Q. WindowsとMacどちらがおすすめですか? A. LUNA 3.0の機能セットはmacOS・Windowsで共通のため、どちらのOSでも同じように使えます。すでに使っているOS・環境に合わせて選んで問題ありません。
Q. LUNA Freeだけで曲を完成させることはできますか? A. 録音・打ち込み・ミックスに必要な基本機能とプラグイン8種が揃っているため、ジャンルによっては最後まで作り切ることは十分可能だと思われます。ただしAudio to MIDIや歌詞転記のようなスマート機能、テープ・コンソールのエクステンションはLUNA Studio限定です。
Q. すでに他のDAWを使っている場合、LUNAに乗り換える意味はありますか? A. VST3・AUのプラグインをそのままホストできるため、プラグイン資産を持ち越しつつ試せるのは利点です。ただしDAWごとに操作感やショートカットが異なるため、乗り換えというより「サブDAWとして併用する」感覚で試すのも現実的な選択肢だと思います。
Q. LUNA Studioは買い切りとUAD Spark Studioのどちらを選ぶべきですか? A. 一括で$199払える人は買い切りの方が長期的には安く済みます。UAD Spark Studioは月額$19.99・年額$149.99で、LUNA Studioに加えてUADネイティブプラグインライブラリ全体もまとめて使える設計なので、プラグインもあわせて試したい人や初期費用を抑えたい人向けの選択肢と言えます。
まとめ
LUNA 3.0の発表で、有料版はLUNA ProからLUNA Studioへと名前を変え、Audio to MIDIや歌詞転記、コード抽出といったスマート機能を大きく強化しました。一方で無料版のLUNA Freeも、ステムセパレーションやLUNA Playなど実用的な機能を積み増していて、単なる「お試し版」の枠を超えた完成度になっています。
UAD系プラグインが気になっているけどハードウェアに手が出ない人、無料DAWで妥協したくない人にとって、今のLUNAはかなり試す価値のある選択肢だと思います。まずはLUNA Freeから触ってみて、API・Studer・AmpexのLUNA Extensionsによるテープ・コンソールの質感やスマート機能が欲しくなったタイミングでLUNA Studioへのアップグレードを検討する、という流れが現実的なはずです。
UADプラグイン自体のセール情報については、UADプラグインセール【2026年9月最新】おすすめは?迷ったらコレ! でもまとめているので、あわせて参考にしてみてください。DAWまわりの他のレビューはsakutoku.jpのDAWカテゴリ からもチェックできます。
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