アンプシミュレーターが多すぎて、何を基準に選べばいいか分からない…… クリーンも粘るクランチも、1台でそれらしく鳴ってほしい……
そんなときに使いたいのが「Tone King Imperial MKII X 」。
Tone King Imperial MKII X
Tone King Imperial MKII Xは、アメリカのアンプメーカーTone Kingの「Imperial MKII」をモデリングした、Neural DSPのギターアンプシミュレーターです。Rhythm(抜けのいいクリーン〜軽い歪み)とLead(太い中域のドライブ)の2チャンネルを切り替えて、クリーンからクランチまでを1台で作れます!
選ぶ軸は、弾きたいジャンルです。ブルース、ソウル、ポップスのバッキングのような、クリーン〜クランチ中心の音楽なら試す価値が高いはず。反対に、メタルのような超高歪みが主役なら、別のアンプシミュレーターのほうが合いそうです。
Xは、2026年10月14日に公式発表されたTone King Imperial MKIIの更新版です。アンプとエフェクトの構成は旧版を引き継いでいて、追加の中心は機能面。ただしIronman IIの扱いはXで変わっています。旧版を持っている人は無料で更新できて、新規で買う人は€99.00(2026-11-02時点、公式表示)。14日間の無料トライアルがあるので、買ってから「思っていた音と違った」と悔やむ前に、手持ちのギターとDAWで音だけ確かめられます。
目次
Tone King Imperial MKII Xとは? 実機の背景
VIDEO
Tone Kingは、ヴィンテージ系アンプが持つ音の抜け、倍音の豊かさ、弾いたときの反応を30年以上追いかけてきたアメリカのアンプメーカー。
実機のImperialは1993年に登場した、Tone King初の量産モデルです。60年代半ばのアメリカンアンプのきらびやかさに、50年代ツイードアンプ系のザラッとした粘りと伸びを合わせたキャラクター。その後に出たMKIIで、歪み始めの質感が磨かれ、パワーアンプを効かせた良い音のゾーンに入りやすい設計になりました。
狙いは、抜けの良さと粘りの両立。冒頭の悩み、つまりクリーンも粘るクランチも1台で欲しいというところに、ちょうど刺さる性格と思われます。
Tone King Imperial MKII X
メリット
Rhythm/Leadの2チャンネルで、クリーンからクランチまでを1台で作れる
パワーアンプ側の調整を、音量を揃えたまま音色で判断できる
旧版ユーザーは無料で更新でき、新規購入でも14日間の無料トライアルで音を確かめられる
デメリット
アンプは1台のみ。幅広いジャンルを1本でまかないたい人には選択肢が少ない
モダンメタルのような超高歪みは守備範囲外と思われる
ライセンス管理にiLokアカウントが必要
Tone King Imperial MKII Xの特徴
Rhythm/Leadの2チャンネルアンプ
バイアストレモロと真空管駆動のスプリングリバーブ
パワーアンプを整えるIronman IIとHF Comp
5×5 Studiosが作った数百のIRから選べるCabsim。自前のIRも読み込める
位置を動かせる8本のマイクと、ルームマイク
プリエフェクトにWah、Compressor、Overdrive 1/2
9バンドのグラフィックEQ(ハイパス/ローパスフィルター付き)
ポストエフェクトにChorus、Stereo Delay、Reverb
Global Lock、Transpose、Doubler、チューナー、メトロノーム
120以上のプリセットとPreset Explorer
Rhythmチャンネル
古いアメリカンアンプらしい、澄んでふくよかなサウンド。ヘッドルームが広く、強く弾くと自然にエッジが出てくる性格です。
ギターのボリュームやピッキングの強さで表情が変わるタイプと思われるので、「弾き方で聴かせる」場面に向きそうです。
Leadチャンネル
こちらはイギリス寄りのキャラクター。中域が厚く、ゲインも多めで、アタックは柔らかめ。Rhythmより一段「歌う」方向に振れています。
ここで効くのがMid-Biteです。丸くて温かいドライブから、引き締まって切れ込むクランチへ寄せられます。ソロで音が埋もれたくない場面では活躍しそうです。
トレモロとスプリングリバーブ
どちらもアンプ側に内蔵されています。
トレモロは、ゆるやかな揺れから深いリズミカルな脈動まで。スプリングリバーブは、自然な奥行きから、長く残る厚いスプラッシュまで広がります。外付けのエフェクトを足さなくても、ヴィンテージ風の雰囲気を出しやすそうです。
Ironman IIとHF Comp
Ironman IIは、実機では歪ませたパワーアンプの音を実用的な音量まで下げる、反応型のアッテネーターです。Xでは、パワーアンプとの相互作用が、音量を揃えたまま音作りをするツールに変わりました。
減衰を深くするほど、高域のプレゼンスは柔らかくなっていきます。それを取り戻すのがHF Comp。
実機だと、パワーアンプを歪ませるには大音量が必要。ここは、プラグインならではのうまみが出る部分と思われます。
キャビネットとマイクの組み合わせ
スピーカーはE33とH30の2種類。
E33:開放的でバランスのいいタイプ
H30:重みが増し、中域が前に出て、イギリス寄りの硬いエッジが乗るタイプ
IR(キャビの響きを記録した音声データ)は、5×5 Studiosが作った数百の中から選べます。手持ちのIRを読み込むこともできるので、スピーカーの選択肢に困ることはなさそうです。
マイクは8本で、位置も動かせます。1本だけ使えば音の焦点が絞れて、2本を組み合わせれば奥行きと幅が出て、ルームマイクを足すと自然な空間が加わります。
エフェクトセクション
プリエフェクトは、アンプを駆動して音を整える役割です。
Wah:スイープが滑らかで、少しうなりのあるヴィンテージ系
Compressor:スタジオ系で、ダイナミクスを締めて、小さい音を持ち上げ、サスティンを足せる。自然なアタックを混ぜる調整もできる
Overdrive 1:最大20dBのクリーンブーストで、温かみと明瞭さを足しつつ、アンプを自然な歪み始めへ押し出す
Overdrive 2:真空管ライクな飽和感で、軽い持ち上げから厚めのドライブまで
EQセクション
9バンドのグラフィックEQに、ハイパスとローパスのフィルターが付いています。
POSTエフェクト
Chorus
Stereo Delay
Reverb
ChorusとStereo Delayは、BBD方式(アナログ回路で遅延を作る方式)らしい温かさが特徴。Reverbはアンプ内蔵のスプリングリバーブより大きな空間まで届き、ほとんど終わりのないような響きも作れます。
追加された便利機能
Xの追加は、音作りの外側の機能が中心です。
Global Lock:プリセットを切り替えても設定を保てる
Transpose:±12半音のピッチ変更で、チューニングを変えた感じを素早く試せる
Doubler:ダブルトラック風のステレオ感を足す
チューナー:画面下部に表示
メトロノーム:拍子、アクセント音、音符の種類を設定できる。スタンドアロンモード専用で、プラグインとしては使えない
Preset Explorer:フォルダ閲覧、最近使ったプリセット、検索、タグ、お気に入り
ツールチップ:パラメーターにマウスを乗せると、下部のバーに説明が出る
Undo/Redo:編集履歴つき
スタンドアロン版はDAWを立ち上げずに起動できるので、メトロノームと合わせて毎日の練習にも使えます。
ジャンル別の使いどころ
ブルース・ソウル
Rhythmのヘッドルームの広いクリーンが、まず軸になりそうです。ピッキングを強めれば自然にエッジが乗る性格なので、コードを軽く弾く場面と、少し力を入れる場面で表情を変えやすいはず。トレモロとスプリングリバーブを足せば、一気にヴィンテージの空気になりそうです。
ポップス・歌ものの伴奏
歌の邪魔をしないクリーンのバッキングや、アルペジオに向きそうです。ChorusやStereo Delay、Reverbのアナログらしい温かさが、伴奏に奥行きを足してくれると思われます。
ブルースロック・ロック
Leadに切り替えて、Mid-Biteで切れ込みを調整するのが基本の使い方になりそうです。Overdrive 1でアンプを押せば、リフもソロも押し出しが出るはず。ただし歪みの深さは、メタル向けの設計ではなさそうです。
気になった点
アンプが1台なので、音色の幅は「Tone Kingのこの1台」でどこまで作れるかにかかっています。ジャンルを横断して使い分けたい人は、ほかのアンプシミュレーターと組み合わせる前提のほうが安心です。
ライセンスはiLokで、アカウントがなければ作るところから。ここは少し手間です。
反対に、役割がハッキリしている分、迷わず使い始められそうです。
どんな人におすすめ?
クリーンは綺麗でも、歪ませると粘りが出ないと感じているギタリスト
ブルース、ソウル、ポップス、ブルースロックなどのバッキングとソロを、1台でまかないたい人
ヴィンテージ系アンプの反応の良さを、DAWで手軽に使いたい人
旧版Tone King Imperial MKIIを持っていて、プリセット管理やTransposeを足したい人
Tone King Imperial MKII Xの価格
価格は€99.00。2026-11-02時点のNeural DSP公式の表示です。円での金額は為替レートで変わります。
14日間の無料トライアルあり
ライセンスはiLok。無料のiLok License ManagerとiLokアカウントが必要
旧版Tone King Imperial MKIIのユーザーは無料で更新できる
購入とトライアルはNeural DSP公式のTone King Imperial MKII X から。Neural DSPのプラグインを初めて買う場合は、購入方法とインストール方法の解説 も用意しています。
Tone King Imperial MKII X FAQ
Morgan Amps Suite Xとはどう使い分ける?
Morgan Amps Suite Xは、AC20(Vox AC30ベースの20W)、PR12(Fender Princeton Reverbベースの12W)、SW50R(Dumbleのクリーンチャンネルがベースの50W)の3台入りで、どれも1チャンネル構成。マイクは10本です。
Tone King Imperial MKII Xはアンプ1台でRhythmとLeadの2チャンネル、マイクは8本。アンプの種類そのものを切り替えたいならMorgan、1台の中でクリーンからドライブまでを弾き分けたいならTone Kingがしっくりきそうです。前世代の構成はNeuralDSP Morgan Amps Suiteのレビュー で整理しています。
メトロノームはプラグインでも使える?
使えません。メトロノームはスタンドアロンモードだけの機能です。DAWの中ではDAW側のメトロノームを使う形です。拍子、アクセント音、音符の種類は、スタンドアロンで設定できます。
プリセットを切り替えても、入力や出力の設定を保ちたいときは?
Global Lockを使います。入力、ゲート、Transpose、Doubler、出力の設定をロックして、プリセットを切り替えても固定できます。プリセットを試し弾きしながら、音量やチューニングの設定を崩したくないときに便利そうです。
Quad Cortexでも使える?
公式ページには、将来のCorOSアップデートでQuad CortexとQuad Cortex miniに対応する予定との告知があります。時期の記載はなく、2026-11-02時点では「SOON」の表示です。本体の違いはQuad Cortex/Quad Cortex Miniの比較 にまとめています。
まとめ
Tone King Imperial MKII Xは、クリーンの抜けと、粘るクランチを1台で作れるアンプシミュレーターです。アンプは1台だけ、ジャンルもヴィンテージ寄りと割り切った設計で、旧版ユーザーは無料で更新、新規は14日間のトライアルで音を確かめてから決められます。
──ブルースやソウル、ポップスのバッキングが多くて、アンプ選びで迷子になっているなら、まずトライアルで弾き比べる価値があるアンプ。メタル中心の人は、別のアンプを探しに行ったほうが近道です。
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