映画のスクリーンから砂漠の熱風が吹き抜け、古代の市場のざわめきが聞こえてくる……。そんな圧倒的な没入感をもたらすエスニック音源、それがBest ServiceからリリースされているAncient ERA Persia だ。
巨匠エドゥアルド・タリロンテ(Eduardo Tarilonte)氏の手によるこのライブラリは、単なる「中東風の音」のコレクションではない。28種類の至宝とも言える民族楽器、1,000を超える打楽器ループ、そして51の神秘的なサウンドスケープ……。
それらが究極のリアリティと人間味あふれるニュアンスでパッケージされている。本物の生演奏と聴き紛うほどの「トゥルー・レガート」や、伝統的な旋律を再現するためのマイクロチューニング機能など、劇伴やゲーム音楽制作においてこれ以上の武器はないと言っても過言ではない。この記事では、Ancient ERA Persiaが世界のトップクリエイターから支持される理由を、収録楽器リストから独自機能、そして導入のメリットまで余すところなく解説する。
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目次
Ancient ERA Persiaとは?中東の魂を宿した究極のエスニック音源
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古代ペルシャの魔法をあなたの楽曲に
Best ServiceのAncient ERA Persia は、中東、特に古代ペルシャ(現在のイラン周辺)の音楽文化を深く掘り下げたバーチャル・インストゥルメントだ。この音源の最大の魅力は、ハリウッド映画やトリプルA級のゲームタイトルでも多用される「タリロンテ・サウンド」の真髄が凝縮されている点にある。
収録されているのは、現地の熟練奏者によって Eldana Studios(スペイン)で丁寧に行われた録音データだ。タリロンテ氏のこだわりは異常なまでに深く、単に音を録るだけでなく、その楽器が本来持っている「魂」や「空気感」をいかにDAW上で再現するかという点に全ての情熱が注がれている。その結果、キーボードを叩いた瞬間、まるで目の前で本物の奏者が息を吹き込み、弦を弾いているかのような錯覚に陥るほどの生命感が生まれる。
劇伴作曲家が熱狂する「リアルすぎる」音の秘密
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多くのエスニック音源が「それっぽさ」の追求に留まる中で、Ancient ERA Persiaが決定的に異なるのは、「人間特有の不完全さと装飾音」 が完璧にコントロールされていることにある。
本物の民族楽器演奏において、音と音の間の繋がり(レガート)や、ふとした瞬間に混じるピッチの揺らぎ、かすかなノイズは、音楽の表現力そのものだ。Ancient ERA Persiaには、これらの要素が多数のアーティキュレーションとして収録されており、キースイッチによって自由自在に呼び出すことができる。
特に、古代の風を感じさせるような木管楽器の震えや、撥弦楽器の鋭くも温かいアタックは、デジタルでありながらオーガニックな手触りを失っていない。この「手触り感」こそが、視聴者の感情を揺さぶる劇伴制作において、唯一無二の武器となるのだ。
Eldana Studiosでのマスター録音と開発背景
Ancient ERA Persiaの開発は、エドゥアルド・タリロンテ氏とエンジニアのホルヘ・カルデロン氏、そして超一流の演奏家たちとの数ヶ月に及ぶ共同作業によって成し遂げられた。録音場所となったスペインの Eldana Studiosは、タリロンテ氏の多くの傑作が生まれた場所として、ファンには聖地のように知られている。
楽器の特性を最大限に活かすため、あえて過度なルーム・アンビエンス(部屋の響き)を入れず、クローズ・マイクで精密にキャプチャされている。これにより、ユーザーは自分のミックスに合わせて自由に残響をコントロールでき、他のオーケストラ音源やアンビエント音源とも完璧に馴染ませることが可能だ。この使い勝手の良さも、プロの現場で重宝される理由の1つである。
[!NOTE] Eduardo Tarilonte(エドゥアルド・タリロンテ) :シネマティック・サウンド・デザイナー。歴史系やファンタジー系音源の第一人者として知られ、その緻密な音作りは世界的に評価されている。 アーティキュレーション :演奏における音の区切りや表情の付け方(レガート、ピチカート、スタッカートなど)。 クローズ・マイク :楽器のすぐ近くで録音する手法。部屋の響きを抑え、楽器自体の詳細な音色を捉えるのに適している。
巨匠エドゥアルド・タリロンテが描く、28種類の至宝楽器リスト
旋律楽器:ネイ、ズルナ、ドゥドゥクなどの木管楽器群
Ancient ERA Persiaの核となるのは、聴く者の心を一瞬で東洋へと誘う魅力的な木管楽器群だ。
Ney(ネイ) :中東音楽の象徴とも言えるフルート。砂漠の孤独を思わせる、かさついた(エアリーな)音色が特徴だ。
Zurna(ズルナ) :野外でも響き渡るような、鋭く力強いダブルリード楽器。情熱的なメロディや躍動感のあるシーンに欠かせない。
Duduk(ドゥドゥク) :アルメニア起源の楽器で、アプリコットの木から作られる。その深い哀愁を帯びた、人間の歌声に近い音色は、世界中の映画音楽で愛用されている。
これら以外にも、Kaval(カヴァル)やMey(メイ)といった貴重な楽器が網羅されており、それぞれの楽器に最適化されたレガート設定によって、息遣いまでを感じさせる旋律を奏でることができる。
撥弦楽器:タール、セタール、サントゥールが生む煌びやかな響き
弦を弾いたり叩いたりして音を出す撥弦楽器も、非常に充実している。
Tar(タール) :皮が張られた長いネックの楽器。独特の共鳴と、力強くも繊細なピッキング・ニュアンスが素晴らしい。
Setar(セタール) :ペルシャの伝統的な弦楽器。爪で弾く繊細な音色が、静謐なシーンや瞑想的な楽曲に深い味わいを与える。
Santur(サントゥール) :ハンマーで弦を叩いて鳴らす打弦楽器。長い余韻と煌びやかな高域が重なり合い、空間を一気にオリエンタルな色彩で染め上げる。
これらの楽器は、強弱(Velocity)によって音色が劇的に変化するようにサンプリングされており、単調な打ち込みを許さない豊かな表情を持っている。
打楽器:ベンディール、ダフ、トンバクが生む力強いリズム
中東音楽のダイナミズムを支えるのは、多彩な打楽器たちだ。
Bendir(ベンディール) :裏側にお互いが張られたフレームドラム。独特のバズ音と深い低域が特徴。
Daf(ダフ) :金属製のリングが取り付けられた大きなフレームドラム。煌びやかな金属音と革の響きが混ざり合う。
Tombak(トンバク) :ゴブレット型の木製太鼓。指や指先を駆使した非常に複雑でスピード感のある奏法が、完璧なマルチサンプルとして収録されている。
これらのパーカッションは単体の音色としてだけでなく、後述する膨大な「ループ」としても収録されており、初心者でも即座に伝統的なリズムを取り入れることができるよう工夫されている。
[!NOTE] ダブルリード :2枚のリードを重ねて振動させる発音機構。非常に個性的で力強い音が鳴る。 打弦楽器 :ピアノの先祖のように、ハンマー状のバチで弦を叩いて演奏する楽器。 マルチサンプル :1つの音に対して、音量差(ベロシティ)や奏法の違いを何段階にも分けて録音したデータ。これを使い分けることでリアリティが増す。
生演奏と聴き紛う「真のレガート」と圧倒的なアーティキュレーション
打ち込みの限界を超える「トゥルー・レガート」の底力
Ancient ERA Persiaが誇る最強の機能、それが「トゥルー・レガート(True Legato)」 だ。これは、音と音の間の移行(トランジション)そのものをサンプリングするという非常に手間のかかる手法で作られている。
例えばネイの音色でドからレに移動した際、人間なら指を動かす瞬間にわずかな音の揺らぎやスラーが発生する。Ancient ERA Persiaでは、この「移動中の音」が実際にサンプリングされているため、キーボードで音を繋げて弾くだけで、本物の奏者が滑らかに指を滑らせたような、完璧なレガートが再現される。
この機能があるかないかで、旋律の説得力は天と地ほど変わる。特にドゥドゥクのような情感豊かな楽器においては、このレガート機能こそが、リスナーを感動させる「歌」を生む鍵となるのだ。
トリル、グリッサンド、装飾音がもたらす「生命感」
民族楽器の魅力はその「装飾音」にある。Ancient ERA Persiaでは、各楽器に多数のアーティキュレーションが用意されている。
トリル(Trills) :隣接する2つの音を急速に往復する奏法。
グリッサンド(Glissando) :音程を滑らかに滑らせる奏法。中東特有の艶やかな旋律には欠かせない。
モルデントやターン :旋律にアクセントを加えるための短い装飾。
これらはキースイッチの切り替えによって瞬時に反映されるほか、Velocityの強さによって自動的にトリガーされるように設定されているパッチもある。プログラムを意識することなく、感性のままに鍵盤を弾くことで、本職の演奏家がアドリブで行うような装飾が曲の中に自然と組み込まれていく。
微分音の世界へ。伝統的スケールを再現するマイクロチューニング
中東音楽(マカームなど)を語る上で欠かせないのが、西洋のドレミでは表現できない「微分音(ハーフフラットなど)」 だ。
Ancient ERA Persiaには、専用のマイクロチューニング・モジュール が搭載されている。これにより、特定の音程を数セント単位で上下させ、伝統的な音律(スケール)を正確に再現することが可能だ。
プリセット機能 :代表的な中東のスケールがプリセットされており、選ぶだけでその雰囲気が再現される。
自由なカスタマイズ :自分だけのオリジナルな旋律を追求するために、1音ずつ細かくチューニングを調整できる。
この機能があることで、Ancient ERA Persiaは単なる「素材集」を超えて、中東音楽の構造そのものをDAWに持ち込むことができる、学術的にも価値のあるツールとなっている。
[!NOTE] スラー :隣り合う音同士を、途切れさせずに滑らかに繋いで演奏すること。 キースイッチ :演奏中に特定の鍵盤(主に低域の演奏外エリア)を押すことで、奏法(アーティキュレーション)を瞬時に切り替える機能。 微分音(マイクロトーン) :半音よりもさらに狭い音程。中東音楽の神秘的な響きの正体。
砂漠の風を再現する51のサウンドスケープと1,000を超えるループ
映画のワンシーンを即座に作るアンビエント機能
Ancient ERA Persiaは、単体の楽器音源として優秀なだけでなく、「シネマティックな音響デザイン(サウンドスカルプティング)」 においても強力な力を発揮する。
収録されている51種類のサウンドスケープは、タリロンテ氏が録音した実音をベースに、複雑なシンセシスやエフェクト処理を施した、極上の質感を誇るパッド音色だ。
雰囲気の即戦力 :鍵盤を1つ押さえるだけで、砂漠の深夜、古代の礼拝堂、風が吹き抜ける遺跡といった風景が目の前に広がる。
レイヤーとモーフィング :モジュレーション・ホイールを使って、音の明暗や質感をリアルタイムで変化させることができ、映像の変化に合わせた絶妙な演出が可能だ。
単体で使えばアンビエントな環境音に、他の楽器と重ねれば、その音に深みと歴史の重みを与えることができる。
変拍子や複雑なリズムを網羅するパーカッション・ループ
「民族楽器のリリズムを打ち込むのは難しそう……」という不安は、1,000以上のパーカッション・ループ が解消してくれる。
これらは単なるwavファイルの貼り付けではない。DAWのテンポに同期するのはもちろん、各ループは楽器ごとに整理されており、複数のループを重ねて自分オリジナルのリズム・セクションを構成することも可能だ。
多様なタイムシグネチャー :4/4拍子だけでなく、中東音楽に多い5/8、7/8、9/8といった変拍子のループも大量に収録されている。
一貫性のあるサウンド :同じ環境で録音された単体楽器と組み合わせることで、ループと打ち込みの音が違和感なく融合する。
MIDIループの追加によるカスタマイズ性の向上
バージョン1.1のアップデートにより、さらに強力な機能が加わった。それが800種類以上のMIDIループ だ。
オーディオループと違い、MIDIデータとして収録されているため、以下のことが自由自在だ:
テンポ変化への完全耐性 :オーディオ的な劣化を一切気にせず、テンポを変更できる。
楽器の差し替え :MIDIデータを別のパッチ(楽器音)に割り当てて、新しい響きを試せる。
フレーズの編集 :基本的なリズムパターンを元に、一部の音を書き換えてオリジナルのフレーズを作れる。
この柔軟性により、Ancient ERA Persiaは「決め打ちの素材集」ではなく、どこまでもカスタマイズ可能な「リズム制作システム」としての地位を確立している。
[!NOTE] サウンドスケープ :音による風景描写。特定の場所や雰囲気を表現するための、音楽的かつ環境音的な音響のこと。 モーフィング :ある音色が別の音色へと滑らかに変化していく手法。 パッド音色 :音の立ち上がりが緩やかで、持続的な空間の広がりを作るための音色。
Ancient ERA Persiaの導入方法:ENGINEプレイヤーと活用術
無料の「ENGINE」プレイヤーの操作性と設定
Ancient ERA Persiaは、Best Service独自のサンプル・エンジンである「ENGINE」 (無料)上で動作する。
KONTAKTのようなデファクトスタンダードとは異なる独自エンジンだが、その操作性は非常に洗練されている。
視覚的なインターフェース :楽器ごとに、その時代の背景を感じさせる美しいグラフィックが表示され、創作意欲を刺激する。
主要なパラメーターへの即座なアクセス :音量、アタック、リリース、リバーブの深さなどが直感的にコントロール可能。
ブラウザ機能 :膨大な楽器やループをカテゴリー別にすばやく検索できる。
最初は独自の操作系に戸惑うかもしれないが、慣れてしまえば「Ancient ERA Persia」という楽器の魅力を引き出すために最適化された設計であることが理解できるはずだ。
システム要件とインストール時の注意点(17GBのライブラリ)
Ancient ERA Persiaを導入する際は、その大容量ライブラリに見合った環境が必要だ。
システム要件 :
対応OS :Windows または macOS
形式 :VST, AU, AAX (ENGINEプレイヤー経由)
ストレージ :約17GB以上の空き容量。高速な読み込みのためにSSDへのインストールを強く推奨。
RAM :8GB以上(サンプルを大量にロードする場合は16GB以上を推奨)
多重サンプリングを多用しているため、ハードディスクからの読み出しでは発音数が多い時にノイズや音切れが発生する可能性がある。現代の音楽制作の標準であるSSD環境さえあれば、非常にスムーズかつ軽快に動作する。
Ancient ERA Persia を使った公式サンプル曲
Gods of Persia, Ancient Era teaser
Battle of Arbela by Alex Pfeffer
Sand Dunes by Roman Heuser
Sands of Steel by Abel Vegas
Gordafarid by Roman Heuser
Moon over Amara by Alexander Seidel
Love in Egypt (Turkish Ney) by Eduardo Tarilonte
Release my Heart (Armenian Duduk) by Ivan Torrent
Eraシリーズ他作品との組み合わせで広がるファンタジーの世界
エドゥアルド・タリロンテ氏の製品ラインナップには、Ancient ERA Persia 以外にも多くの「Era(時代)」シリーズや「Forest Kingdom 」シリーズが存在する。
これらは全て「同じ開発哲学」と「近い録音環境」で作られているため、Ancient ERA Persiaの音と混ぜても全く違和感がない。ケルトのハープにペルシャのネイを重ね、中世のボーカルを添える……。そんな、歴史の境界を超えた「ハイブリッド・ファンタジー・スコア」 を作れるのが、タリロンテ作品を揃える最大の醍醐味と言えるだろう。
Ancient ERA Persiaは、中東音楽に関心がある人だけでなく、あらゆる劇伴クリエイターにとって「魂を揺さぶる音」の源泉だ。セール時を狙えばさらにコストパフォーマンスも高くなる。この17GBの古代の知恵を、あなたのDAWに迎え入れてみてはいかがだろうか。
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