


サビを大きくしたくて、ノコギリ波のシンセを何本も重ねる。
ユニゾンを増やす。ディチューンを広げる。コーラスとリバーブも足す。
それでも欲しかった高揚感より先に、低域が濁る。コードの芯が消える。CPUだけが重くなる。
Supersawの音作りでよくある勘違いがあります。 それは、Sawを増やせば増やすほど、サビは大きくなるという考え方です。
確かに、複数のノコギリ波を少しずつズラして重ねれば、音は太く、広く、派手になります。ただ、すべての音を同じように広げると、中央に残るコードの芯まで薄くなります。
結果として、ステレオでは気持ちいいのに、ミックスへ入れた途端にボーカルとぶつかる。モノラルで聴くと弱い。キックとベースまで濁る。
欲しいのは「音の面積」ではありません。 曲の前半よりサビが大きく感じる、コードが一気に開く、感情が上へ引っ張られるような変化です。
そのために必要なのは、Supersawをひたすら足すことではなく、中心に残す音、左右へ広げる音、セクションで動かす音を分けることです。
そこで刺さるのが、Native InstrumentsとA. G. Cookの共同開発によるSuper*Sawです。

公式ではSuperStarSawと表記されるシンセで、積層ノコギリ波の高揚感を、複雑なレイヤーとオートメーションなしで演奏へ戻すために作られています。
Super*Sawは、ふたつの独立したSawバンクを使えます。各バンクには最大16本のノコギリ波を束ねられ、Detune、Spread、Width、Retriggerなどを個別に調整できます。
1つ目のバンクへ、モノラルでも残るコードの芯を担当させる。 2つ目のバンクへ、左右に広がる空気感、上のオクターブ、動く質感を担当させる。
役割を分けるだけで、Supersawはただの厚い壁ではなくなります。低域と中心を守りながら、サビの外側だけを大きくできます。
さらに、4つの音色状態を連続的に移動できるMorpherを使えば、Aメロの控えめなコードから、プレコーラスの期待感、サビの大きな広がりまでをひとつの操作へ集められます。
Supersawを作るとき、最初に決めるべきなのはユニゾン数ではありません。 「このコードの中心を何が支えるか」です。
コードの根音や主要な構成音まで大きくDetuneし、Widthを広げ、長いリバーブを足すと、音色は豪華になります。しかし、中心にあるはずの音まで左右へ散り、コードの輪郭がなくなります。
Super*Sawでは、1つ目のSawバンクを芯として使います。DetuneとWidthは控えめにして、コードを鳴らしたときに真ん中へ残る音を作る。
2つ目のSawバンクは、外側担当です。Detune、Spread、Widthを増やし、必要なら高めのオクターブへ置く。サビで耳を包むように広がる成分は、こちらに任せます。
この分け方なら、低域が濁ったら外側のバンクを下げる。広がりが足りなければ外側のWidthを動かす。コードの芯が弱ければ中心のバンクを見る。
何を直すべきかが明確になります。
Super*Sawの核は、4コーナーのXY Morpherです。 4つの角へ異なるパラメーター状態を保存し、XYパッドを動かすと、その間を連続的に行き来できます。 左下には、フィルターを少し閉じてWidthも控えめなAメロの状態。 右下には、少し明るく、外側のバンクを足したプレコーラスの状態。 左上には、GlideやVoice Offsetで不安定な上昇感を作った状態。 右上には、フィルター、Width、空間を開いたサビの状態。 プレコーラスの最後でXYを動かし、サビ頭で右上へ入る。 それだけで、同じコード進行でも展開が生まれます。
複数のシンセトラックをミュートし、フィルターを別々に書き、リバーブをオートメーションする方法もあります。Super*Sawは、そうした変化を一つの音色の演奏としてまとめられるのが強みです。
Supersawは少しの不安定さが魅力です。ただし、複数のSawが揺れ、Glideが動き、コードを厚くすると、偶然の不協和音が「面白い」から「濁っている」へ変わりやすい。
Super*SawにはChord、Scale、Quantizeの機能があります。
Chordモードでは、厚い和音の出発点を作れます。ScaleやQuantizeを使えば、音色を大胆に動かしても曲の調性から外れにくい。コード進行に自信がなくても、響きを試しながら高揚感のある方向を探れます。
音楽理論を自動で完成させる機能ではありません。どの和音が曲に合うか、どの不協和音を残すかは自分で決める必要があります。 ただ、音色を実験するたびにコード進行が壊れる問題を減らせるため、試行錯誤の回数を増やせます。
複数のSawを重ねても、すべてが同じタイミング、同じ速さで動くと、音の塊は平らに聞こえます。
Voice Glideは、コードが変わるときの滑らかなピッチ移動を作ります。短ければ自然なつながり。長くすれば、サビ前に吸い込まれるようなレイヴ感や、ハイパーポップらしい液体的な動きを作れます。
Voice Offsetは、声部ごとのわずかなズレを使い、全員が一斉に鳴る硬さを減らすために役立ちます。 どちらも強く使えばよいわけではありません。
最初はGlideかOffsetの片方だけを小さく動かしてください。コードの切り替わりで期待感が欲しいならGlide。ステレオの端に呼吸するような揺れが欲しいならOffset。
目的を分けると、Supersawは太いだけのコードから、曲を前へ運ぶ動くコードへ変わります。
サビを大きくするために、新しいレイヤーを足す必要はありません。
Aメロではフィルターを少し閉じ、Widthも抑える。プレコーラスで外側のSawバンクを少し足し、Glideを増やす。サビでフィルター、Width、Morpherを最大の状態へ入れる。
前のセクションと差があれば、同じコードでもサビは大きく感じます。
Super*SawにはChorus、Delay、Reverbも入っています。ただし、最初から3つを大きく使うと、Sawの芯が見えなくなります。ドライな状態で中心と外側の役割を決めてから、必要な空間だけを足す。ボーカルがある曲なら、特にこの順番が重要です。
Super*Sawが向くのは、Supersaw系の音作りでレイヤーとオートメーションが増えすぎ、曲の展開を試す前に疲れる人です。
サビを大きくしたいのに、音を足すほど濁る。広げると中心が消える。音色は良いのに、Aメロからサビまで同じ表情で平坦に聞こえる。
そんなとき、2つのSawバンクで芯と広がりを分け、Morpherで曲の段階を動かし、ChordとScaleで音楽性を保てるSuper*Sawは、制作を前へ進める即戦力なシンセになります。
トランス、EDM、ハイパーポップだけでなく、ダンスポップのサビ、ゲーム音楽の上昇感、劇伴の幻想的なコード、ロックへ混ぜる持続的な質感にも使いどころがあります。
Supersawの高揚感は、Sawを無限に増やすことからは生まれません。 中心に残す音。 左右へ広げる音。 セクションで動かす音。 この3つを分けると、コードは濁らずに大きくなります。
Super*Sawは、積層ノコギリ波を太く鳴らすだけのシンセではありません。複数のレイヤーとオートメーションで作っていた「サビへ向かう変化」を、演奏可能な1台へ集めるシンセです。
サビを大きくしたいなら、次の曲ではシンセを足す前に、何を中心へ残し、何を外側へ広げ、どこから動かすかを決めてください。
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