


ストリングスを重ねた。ブラスも鳴らした。パーカッションも入れた。それでも完成した曲を聴くと、豪華なサンプルを一斉に鳴らしているだけで、映画やゲームの場面が浮かんでこない……。
オーケストラ打ち込みで一番難しいのは、音を増やすことではありません。どの楽器が何を語るのか、曲のどの瞬間に入って、どの瞬間に消えるのかを決めることです。
そんな制作を一つのパレットで進めたい人に向くのが、EastWestのHollywood Orchestra Opus & Hollywood Fantasy Orchestra Bundle。

Hollywood Orchestra Opusは、映画スコアの骨格を作るための通常オーケストラ。Strings、Brass、Orchestral Woodwinds、Orchestral Percussion、Solo Violin、Cello、Harp、Hollywood Orchestrator、拡張パックまでを含みます。
Hollywood Fantasy Orchestraは、ファンタジー、古代、中世、ワールド寄りの色彩を担うもう一つの楽団。Fantasy Strings、Brass、Winds、Percussion、Voices、Hollywood Fantasy Orchestratorを使い、通常オーケストラだけでは作りにくい文化圏を曲へ加えられます。
二つを揃える価値は、単に収録楽器が増えることではありません。現代的な映画音楽の土台と、異世界・神話・民族的な物語を説明する音色を、曲の場面ごとに選べることです。
「何の楽器を足せばサビが大きくなるのか」で止まる時間が減ります。
通常の映画音楽にしたいなら、Hollywood Orchestra Opusで低弦、弦の和声、ホルン、打楽器という骨格を作る。中世の城、古代遺跡、魔法、RPGのフィールドを描きたいなら、Hollywood Fantasy Orchestraの管、打楽器、声を足して場所の空気を作る。
音源の選択が、曲の次の展開に直結します。ストリングスとブラスをただ厚くするのではなく、「通常オーケストラの世界」から「異世界の文化圏」へ移るように音色を出し入れできる。音の変化そのものが物語になります。
両方に入るOrchestratorも便利です。コードを起点に大きな編成の景色を作り、そこから主役以外を外す。細かなオーケストレーションを全て手で書く前に、曲の規模感を確認できます。
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オーケストラらしい迫力を作りたいと、全パートを同時に鳴らしたくなります。低弦、バイオリン、ホルン、トランペット、木管、大太鼓、シンバル。音量はすぐに増えます。
ただ、音量が増えても、主役がいなければ曲は大きく聞こえません。高いストリングスとトランペットが同じ場所でメロディを奪い合う。低弦と大太鼓が同じ拍を埋め、リズムが重くなる。木管の細かい動きが、分厚い和音の下で消える。
壮大さを作るのは、楽器の総数ではなくコントラストです。
静かな弦の持続があるから、次に入るホルンが大きく聞こえる。低弦を休ませた空白があるから、大太鼓の一撃が場面を動かす。木管を一瞬だけ鳴らすから、景色が変わる。
オーケストラ打ち込みは、常に足す作業ではありません。どのパートを止めるかを決める作業です。
Hollywood Orchestra Opusが受け持つのは、現代的なシネマティック音楽の中心です。Strings、Brass、Orchestral Woodwinds、Orchestral Percussionに加え、Solo Violin、Cello、Harp、Hollywood Orchestrator、Expansion Packsを含みます。
まずは低弦、弦の和声、上のメロディという三層だけで八小節を作るのがおすすめです。
低弦は曲の重心と危機感を作る。中域の弦はコードの温度を作る。高弦や木管は、メロディや光の方向を作る。三つの層が同じリズムで動かないようにすると、音数を増やさなくても立体感が出ます。
金管は常時鳴らすより、頂点へ残す。ホルンだけで支える場所を作り、サビや戦闘の決定打でトランペットや低金管を追加する。ブラスの不在を作るほど、ブラスの入る瞬間が大きくなります。
木管とハープは、豪華さを増やすための装飾ではありません。場面を切り替えるための音です。弦が伸びている休符へ木管の短い返答を置く。和声が変わる場所にハープを置く。少ない音でも、聴き手の耳を次の景色へ移せます。
深いリバーブ、マイナーコード、クワイアを入れれば、ファンタジーっぽい曲は作れます。でも、通常のストリングスとホルンだけで続けると、どの曲も同じ西洋オーケストラの世界に聞こえやすいです。
Hollywood Fantasy Orchestraは、Fantasy Strings、Brass、Winds、Percussion、Voicesを使い、曲へ古代、中世、神話、ワールド寄りの空気を加えます。
森の場面ならFantasy Windsを短く使う。儀式ならFantasy PercussionとVoicesで古い時間の流れを作る。ボス戦ならHollywood Orchestra Opusの低弦と打楽器で現代的な迫力を作り、Fantasy BrassやVoicesで敵の固有性を加える。
ポイントは、Fantasy系の音色を常に薄く重ねないことです。曲の導入でFantasy系の音色だけを聞かせる。通常オーケストラが休む瞬間に入れる。音色を装飾ではなく、物語の主語として扱うと、世界観が急に具体的になります。
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編成を大きくするとき、三度や五度を積みすぎると和声が濁りやすいです。最初に試したいのは、オクターブを使った重ね方。
主旋律を一オクターブ上または下へ足す。低弦のリズムを低金管で補助する。サビだけ高弦と高い管をオクターブで重ねる。縦の線が太くなり、広い編成でもフレーズが埋もれにくくなります。
Hollywood Fantasy Orchestraには現代的なオクターブ・ダブルのオーケストラセクションも含まれます。通常オーケストラの骨格にFantasy系の色彩を足しつつ、主旋律やリズムを前へ出したいときに役立ちます。
オクターブは、最初から最後まで使わないことも大切です。Aメロは薄く、サビで一段広げる。ラストだけさらに増やす。使わない余地を残しておくほど、後半の盛り上がりは作りやすいです。
Orchestratorは、曲を自動で完成させるための機能ではありません。コードから大きな編成のスケッチを作り、「この八小節はどういう規模に聞こえるか」を早く確認するための機能です。
何もないピアノコードを前にして、弦、金管、木管、打楽器をどこから書くべきか迷う。そんなときにOrchestratorで最初の景色を出し、次の三つを行います。
この流れなら、オーケストレーターの便利さを使いながら、既製の並びで終わりません。初心者なら編成の考え方を学べる。中級者以上なら、スケッチ作りの速度を上げられます。
1. 場面を一文で決める
「壮大な曲を作る」ではなく、「夜明け前に主人公が古い城を出る」「砂漠の遺跡で敵へ見つかる」のように書きます。場面が決まると、通常オーケストラとFantasy系のどちらを主役にするかが見えます。
2. Hollywood Orchestra Opusで骨格を作る
低弦、弦のコード、ホルンまたは木管の三層から始めます。最初からフルブラスと大太鼓を使わず、和声と重心を決めます。
3. Hollywood Fantasy Orchestraで場所を作る
Fantasy Winds、Percussion、Voicesを一つずつ追加します。音色を増やす前後で、曲の場所や時間が変わったかを確認します。変わらないなら、重ねるよりフレーズをずらします。
4. 頂点だけで、オクターブと打楽器を解放する
サビ、戦闘、映像の切り替わりなど、一番大きくしたい瞬間にだけ重ねます。それまで使わなかった要素が、最大の武器になります。
5. 小音量とモノラルで確認する
主役のメロディ、リズムの推進力、低域の重心が残るかを確認します。残らない場合は、楽器を追加しない。内声、低弦、パーカッションのどれかを外します。
映像、ゲーム、アニメ、トレーラー向けの曲を作りたい人。通常の映画オーケストラだけでは、異世界や中世の空気を作りきれない人。オーケストレーションの初稿を速く作り、そこから自分の曲へ編集したい人。
逆に、ピアノとストリングスだけのシンプルなBGMが中心なら、最初から大きなバンドルは必要ないかもしれません。少ない音源で八小節を完成させる練習も、オーケストラ打ち込みでは重要です。
Hollywood Orchestra Opus & Hollywood Fantasy Orchestra Bundleは、楽器を増やすための製品ではありません。通常の映画音楽の骨格と、ファンタジー世界の色彩を使い分け、曲の場面を音で説明したい人のための制作環境です。
オーケストラ打ち込みで壮大さを作る鍵は、全員を鳴らすことではありません。主役を決め、通常オーケストラで骨格を作り、Fantasy系の音色で物語の場所を作り、頂点だけで編成を解放することです。
Hollywood Orchestra Opusは映画音楽の骨格。Hollywood Fantasy Orchestraは異世界の文化圏。二つを組み合わせると、豪華な和音を並べる段階から、場面が動く音楽を作る段階へ進めます。
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